ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長
1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。
パッカード・レポート8月
アメリカは、1974年の夏に起きたウォーターゲート事件以来、最大の危機に直面している。モニカ・ルインスキーを取り巻くスキャンダルに簡単な決着がないのは、私を含む多くの国民がわかっていたことだ。それでも、この数日間の悪展開は予想もしなかった。
最も驚いたのは、クリントン大統領が釈明と謝罪をしたことではない。ほとんどの人は、クリントン大統領が涙を流しながら演説し、許しをこい、支持を獲得しようとすると考えていた。特に、今年1月の段階でうそをついていたという圧倒的な証拠を目前にしては、こうするべきであった。
予想外だったのは、大統領がスター独立検察官を攻撃したことだ。これはクリントン大統領らしくないバカな行動だった。悔い改めるそぶりも見せずに、独立検察官を攻撃することによって、さらに厳しい報告書を下院に提出する強い意気込みをスターに与えたまでだ。謝罪の説得力も薄らいだ。弁護士や顧問のアドバイスを振り切り、なぜ大統領はこのような行動をとったのか?
私が思うには、クリントン大統領は絶望を感じていた。9月にはスター独立検察官も手の内を見せる動きがあって、かなり強気な姿勢を構えている。8月17日の質問内容で、クリントン大統領もそれを感じ取ったのかもしれない。スター独立検察官が議会に提出する報告書には、クリントン大統領大統領が偽証を図った決定的な証拠が含まれていると予想される。これが本当であれば、唯一の弁護策はスター独立検察官を攻撃し、この問題を早く終わらせたいと思う国民感情に訴えることだとクリントン大統領は考えたのかもしれない。
いずれにせよ、この問題はまだ何カ月か続く見通しで、クリントン大統領の評判及び指導力を大きく損なうことになる。次期大統領選の出馬を予定しているゴア副大統領にも影響を及ぼすことになりかねない。また、ゴアとハロルド・アイクスが関わっていると見られる違法献金疑惑の新たな捜査も数カ月間に渡って行われることだろう。
次はいったい何が起きるのか? まず、ヘンリー・ハイドが委員長を務める下院司法委員会はスター独立検察官の訴えを調査しなければならない。おそらく11月3日の中間選挙以降になるだろう。その間に、不倫に関する具体的な情報が漏れ、大統領の国内外の信頼性はいっそう弱まる。
この時点において、アメリカ国民の世論は予想もつかない。しかし、国民の強い支持がなければ下院は弾劾の手続きに踏み切らない。現在、クリントン大統領の支持率は下がってきているが、弾劾に反対する人はまだ過半数を若干超えている。裏切られたという気持ちが高まり、大統領に対する失望感が深まるにつれ、支持率はさらに低下すると私は見ている。
下院が弾劾に踏み切れば、場は上院に移り、大統領はいわば裁判にかけられることになる。統括者は共和党員のウィリアム・ラインキスト最高裁長官。下院によって弾劾されればアンドリュー・ジョンソン大統領(1865年)以来となる。ジョンソンでさえ上院の反対票は逃れた。上院がクリントン大統領を大統領の座から追い出すとは考えにくい。しかし、その場に立たされるだけでも、残る任期に暗い影が覆われることになる。
私の見解が間違っていることを祈る。ほとんどの国民はこの問題の素早い解決を求めている。しかし、すでにコントロールできる範囲を超えてしまい、あとは時間が解決することだ。残念ながら今後2年間はかかりそうだ。
−ジョージ・パッカード
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