最終更新: 2008/10/13 00:30

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

パッカード・レポート 6月

ことしの日米関係が非常に好調であることを根拠に、米議会上院は、外国からの鉄鋼の輸入を厳しく制限する下院の「鉄鋼回復法案」を圧倒的多数で否決した。その舞台裏では、特別団体の間で激しい論争が繰り広げられていた。

まず、最も力を発揮したのが、全米鉄鋼労組である。この労働組合は、2000年の大統領選挙に大きな影響力を持つとみられ、多額の資金を集め、支持する政治家に献金をしている。

日本、韓国、ブラジル、ロシア、中国、インドネシア、そしてタイからの鉄鋼輸入が、1998年後半に米国内市場の40%にまでのぼり、アメリカの鉄鋼業者は、これらの国が大幅に安い価格で鉄鋼を輸出し、ダンピング販売を行っていると批判した。

一方、労働組合に対抗したのが、農業団体だった。保護的な法案が可決されれば、農産物の輸出に悪影響を及ぼし、世界貿易機構(WTO)も「クロ」の判定を出す可能性が高いことを理解していた。

鉄鋼製品の価格が上昇すれば、利益も減るという理由から、GM(ゼネラル・モーターズ)社などの生産者も、農業団体側に立った。

ホワイトハウスは最初から法案に反対だったが、ここでも意見が割れた。クリントン大統領およびバーシェフスキ通商代表とデイリー商務長官が、真っ向から法案に反対の姿勢を示した一方で、ゴア副大統領は、直前まで無言を通し、投票の2日前、6月20日になって、やむを得ず、規制は必要ないと宣言した。2000年の大統領選挙で、全米鉄鋼労組の支持を獲得しようとしているゴアは、投票まで至らないことを期待していたのだ。

これが引き金となって、共和党員は法案を投票に持ち込んだ。下院の法案を上院で可決し、クリントン大統領に拒否権を行使させ、ゴアの鉄鋼労組寄りのスタンスを崩すのが狙いだった。

実際、投票が集計される6月22日まで、結果は不透明だった。下院では、289対141の差で可決された。当初は賛成するかもしれないと示唆していたロット院内総務も、最後の最後になって反対票を入れた。

興味深いことに、当日の新聞には、反保護主義を主張する記事が多く見られた。ワシントンポスト紙の社説欄に掲載された、自由貿易を支持する国際経済団体によって書かれた記事は、法案に強く反対していた。仮に法案が可決されれば、「アメリカの世帯から年間15億ドルを奪い、限られた企業に12億ドルの利益をもたらし、わずか1,700人の雇用を守るのに、1人あたり年間80万ドルを費やすことになる」と指摘した。ニューヨークタイムズ紙もこの記事を引用した。

最終的には、農業団体が流れを変えた。法案が通れば「貿易相手国にも保護主義の台頭を招く」と説得力のある主張をした。

日米の友好関係に注目している人々にとって良い知らせとなったのは、6月22日の投票で、日本から輸入されている鉄鋼製品がほとんど話題にならなかったことだ。ワシントンポスト紙は、日本について一切書かなかったし、ニューヨークタイムズ紙も、韓国とブラジルのほかに日本の名前を手短に上げただけだった。

アメリカ経済が好調だからこそ、このような結果になったが、もしアメリカ経済が不況に陥っていたら、違う結末を迎えていたことだろう。

−ジョージ・パッカード

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