ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長
1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。
パッカード・レポート 7月
緊迫している米中関係にとって、8月は重要な月となるだろう。客観論者は、WTO(世界貿易機関)加盟交渉が前向きに進み、9月にニュージーランドで開かれるAPEC(アジア大平洋経済協力会議)までに、クリントン大統領と江沢民国家主席が合意に至ることを期待している。
中国に対する関与政策を支持する人は、米議会下院が、中国の最恵国待遇更新を260対170で可決したことを大いに歓迎した。昨年も264対166で可決された。
これが、すんなり通ったことは、中国に対して強行姿勢を保っている人に大きな打撃を与えた。彼らは、おそらくスパイ疑惑、大使館誤爆などで、関係が悪化すると考えていただろう。また、ディック・ゲッパート議員率いる自由主義の民主党員及び宗教の自由を支持する右翼は、「法輪功」の取り締まりを命じた中国政府を厳しく批判した。
下院民主党院内総務であるゲッパート議員は、特に強い口調で中国政府を非難した。議会中に、「法輪功」に対する取り締まりについて、「これで進歩したといえるのか。アメリカはいったいいつになったら中国に対し、人権の尊重を求めるのか」などと訴えた。
また、拡大しつつある中国の貿易黒字に怒りを隠しきれないタカ派は、これほどの大差で可決されるとは思っていなかったようだ。
米中関係が最近になって好調を取り戻している理由として、4つの原因が考えられる。
まず、商業団体などが、米政府に圧力をかけている。景気の良さに後押しされ、米商工会議所やボーイング社、GM社、コダック社などの大企業が、政府にかなりのプレッシャーをかけていることから、政府は冷戦時代の対中政策に逆戻りできないでいる。
次に、アジアの経済は、まだ完全には回復していない。中国がウォンを下落させれば、再びアジアの経済が不安定になる可能性もあると考えられる。現在、米財務省はこの傾向を注意深く見守っている。
3つ目は、台湾の李大統領が「二国論」を主張した問題発言だ。これが意外な結果をもたらし、米中の関係改善につながった。ワシントンにとって、李大統領の発言は、大きなショックで、政府関係者は李大統領の発言からアメリカを遠ざけようとした。中国が力ずくで台湾を取り戻そうとした場合、多くの政治家は、アメリカが台湾を守るべきだと考えている一方で、そのために米兵の命を犠牲にする覚悟ができている人は少ない。
最後に、約3,300マイル(約5,300km)の飛距離を持つテポドンミサイルの第3回発射計画がうわさされている北朝鮮問題で緊張が高まっている。ワシントンは、北朝鮮がミサイル実験を続行すると確信している。しかし、アメリカだけでは、どうにもならない問題で、北朝鮮に最も影響力を発揮できるのは中国だということも理解している。アメリカが対立姿勢ではなく、関与政策を選んだ背景には、こういった現実もある。
もちろん、この考えは間違っているかもしれない。中国がウォンを下落させ、反政府活動家の取り締まりを強化することもあり得る。また、台湾との緊張が高まったり、ひそかに北朝鮮の活動を支持したり、再び新たなテンションが生まれることも大いに考えられる。しかし、今後の展開として最も可能性が高いのは、アメリカと中国が最悪のシナリオを避け、関係改善に努めることだろう。
−ジョージ・パッカード
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