最終更新: 2008/12/05 21:20

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

パッカード・レポート 8月

秋が近づくにつれて、多くの政治家および報道陣が休暇を楽しんでいるため、最近のワシントンでは、あまり大きな動きは見られない。日米関係は、小渕首相がアメリカを訪れたことし5月から引き続き好調だ。日本が、戦域ミサイル防衛(TMD)構想に参加するとあって、米国防総省や議会も今のところ満足している様子。今は、北朝鮮のミサイル発射問題が関心を集めている。

しかし、日米関係に全く動きがないわけではない。ことし最も注目すべき展開は、政治ではなくスポーツ、そう、アメリカ人の心のふるさとでもある野球場で繰り広げられている。

このアメリカで、6人の日本人投手が大活躍している。野球のみならず、チームメート、ファンおよびスポーツライターにも受け入れられるようになった。

日本人選手に人気が集まることは、今までのアメリカにはあまりなかったことだ。アメリカ人選手と違って、彼らは不思議な言葉を話し、不思議なポーズを取った。しかし、野茂投手がみんなの固定観念を少しずつ変え、徐々に違和感がなくなった。

それでも、ヤンキースの伊良部投手が、試合中に1塁ベースのカバーに入らなかったとき、チームのオーナーであるスタインブレナー氏が彼をののしった。

1人の選手が、このような集中攻撃を受けるのはアメリカでは珍しい。個人的には、日本人がゆえに起きた問題としか当時は考えられなかった。

その後、6人そろって成績を上げている。ヤンキーズの先発ピッチャーの中で、伊良部の信頼度も高まっている。ニューヨークのファンも、彼を応援するようになった。

さらに驚くのは、メッツ吉井投手の活躍。成績の伸び悩みから、これまで何度も解任されそうになり、8月には先発から外され、リリーフとしてプルペンに入った。しかし、けが人が出たため、8月13日の試合で先発復帰を果たし、その後の2試合に登板し、まずまずの成績を上げた。

ひとつ言っておかなければならないのは、ニューヨークのファンやメディアはほかと比べて、かなり厳しい。勝つのが当たり前、勝たなければ、ファンからはブーイング、メディアからは翌日の新聞でぼろぼろに書かれる。

そんな中、メッツのバレンタイン監督は8月19日、吉井についてこう語った。「吉井はプロだ。競争という物をよく理解している。自分の立場を自覚し、チームに大きく貢献していることは間違いない」

この言葉は、単に吉井のカムバックをほめている訳ではない。ほかのアメリカ人選手と同様に扱い、完ぺきにチームの一員として認めている。今までのように、特別扱いをしたり、外国人扱いをしているのではなく、1人の人間として見ている。

お互いの文化をよく理解している人にとっては、不思議ではないかもしれない。しかし、アメリカの修正主義者が「日本人はわれわれと違って信用できない」と宣言した時から、わずか10年しかたっていない。国家主義者ともいえる石原慎太郎都知事からも、「日本人は他民族と違う、ある意味で優れている」といったイメージがにじみ出ている。

数週間前、朝日新聞の天声人語が、江藤淳氏の自殺を取り上げた。江藤氏は、自分は「まず日本人であり、次に人間」と主張した。日本は、国のためにも、このような考えを変えなければならない。世界に日本のいいところを見せなければならない。

一方、アメリカも日本に対する考えを変えなければならない。「双方の理解を深める」、ほかのだれもが果たせなかったことを、34歳の1人の日本人投手が実現させたような気さえする。

−ジョージ・パッカード

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