ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長
1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。
パッカード・レポート 2003年2月
ブッシュ大統領が対イラク武力行使へと一直線に走る中、アメリカの外交関係者は困惑を隠し切れない。
周囲のほとんどは、9月11日の同時多発テロ事件以来、アメリカの中東政策に欠陥があると感じている。なぜなら、ブッシュ大統領は世界貿易センタービルと国防総省を狙ったテロ組織アルカイダの自爆テロにイラクを結びつけることができないからだ。
実際、多くの信頼できる報道機関は、リチャード・パール及びポール・ウォルフォウィッツ国防副長官率いる少数のイスラエルびいきの「タカ派」がアメリカの外交政策を乗っ取っていると報じている。
フセイン大統領が、米CBSテレビのキャスター、ダン・ラザー氏と行った単独インタビューに対するニューヨークとワシントンの反応は冷ややかだった。ラザー氏に比べ、フセイン大統領が数倍賢く見え、暴言も数々飛び出したが、ブッシュ大統領が常に描いている「悪魔」的な存在は伝わってこなかった。
先日開かれた外交評議会では、元ブッシュ政権及びクリントン政権の元高官2人が演説を行った。
両氏は、父のブッシュ元大統領はこの問題を息子と違う方法で対処しただろうと口をそろえた。父のブッシュ元大統領は、電話や直接対談を通して同盟国に協力を要請し、国連安保理での過半数獲得をめざしたという。
また、いったん戦争が始まれば、テロリストによる大量破壊兵器を使ったアメリカ本土への攻撃も考えられるという。
さらに、戦争で勝利を収めても、戦後のイラクの復興を見届けられるほどブッシュ政権は長続きしないだろうという。2004年10月の次期大統領選を控え、多くの犠牲者が出る危険性があれば、ブッシュ大統領はイラクから米軍の撤退を余儀なくされるとの見方が強い。
9月11日の同時多発テロ事件後のアメリカは、イスラエルのシャロン首相にヨルダン川西岸のユダヤ人入植拡大の中止を求め、イスラエルとパレスチナの和平に専念すべきだったという。
共和党内でも混乱は続いているが、民主党の次期大統領選候補はそれ以上にまとまりがない。
元バーモント州知事のハワード・ディーンが戦争反対を主張し、脚光を浴びている。泥沼戦争になった場合は有利になるとみられる。一方、ジョセフ・リーバーマン上院議員が最も積極的に戦争を支持している。最有力候補のジョン・ケリー上院議員は、昨年の秋に可決された「対イラク攻撃容認」決議案に賛成票を投じながらも、機会さえあればブッシュ大統領を強く批判し、優柔不断な態度を見せている。
外交問題でアメリカがこれほどまでに引き裂かれるのはベトナム戦争以来だ。ブッシュの支持率は54%に下がり、戦争で多くの死傷者が出れば、さらに下がるとみられる。株式市場は現在待機中で、よい結末を迎えるまで上昇は期待できない。
イラク、アメリカ、国連そして世界にとって、3月は重要な月となるだろう。
−ジョージ・パッカード
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