最終更新: 2008/08/29 13:43

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ディック・モリス氏

ディック・モリス氏略歴
コロンビア大学卒業。クリントン大統領の元選挙参謀。

選挙戦略家として、1996年の米大統領選挙でらつ腕を奮い、クリントン大統領再選に貢献した。現在、インターネット上でさまざまな投票を募るVote.comのPresidentをつとめるほか、FOXニュースチャンネルのコメンテーターやニューヨーク・ポスト紙へのコラム執筆などの活動を行っている。著書「オーバル・オフィス(大統領執務室)」(扶桑社刊)でホワイトハウスの内部事情を克明に描いた

モリス・レポート 2003年9月

ブッシュ人気は引き続き下降、再選は無理?

ブッシュ大統領への支持率はますます下がり続け、過去最低となっている。4月の時点で70%ちょっとだったものが、5月には60%少しとなり、それが7月には50%台にまで落ち込み、今ではそれすら切りそうなところまで来ている。ゴアが現在選挙で戦っていたら、必ずブッシュを破っていたことだろう。
支持率低下の原因は、経済の低迷、イラク戦でのダメージ、ビン・ラディン氏やフセイン大統領の追跡失敗、加えてヘルスケアや処方薬の出費問題など、内政面に疎いブッシュの政策などが表向きの理由になってはいるが、実はそうではない。ブッシュは、その失策によって投票者の信頼を失っているわけではなく、実にその「成功」により、難しい立場に追いやられているのだ。
アメリカ人の中で、テロの恐怖はもはや国を脅かす一番の重大事ではない。現に国民統計をとっても、テロが深刻な問題だと感じているアメリカ国民は10%に満たない。つまり、アフガニスタンに続きイラクを押さえ込み、新たなテロ計画やその可能性を白日の下にさらすことに成功したブッシュの「善政」によって、アメリカ国民の中のテロへの恐怖は次第に薄らいでいった。しかし、これがブッシュ自身にとってありがたくないことになっているのだ。
ではどうするのか?
今、ブッシュは、テロに対する大衆の意識をもう1度盛り上げようと躍起になっている。9.11の記念行事や9月7日の日曜日に全国ネットで放送されるテレビ映画(9.11での彼の功績について描かれている)を通して、国民にテロはまだ続いており、依然脅威に変わりはないのだと呼びかけようとしている。
しかし長期的には、ブッシュはこのテロ戦争に対する新たな局面を開かなければならないだろう。アフガニスタンのあと、イラクに目を向けることで、ブッシュは支持率の下降を食い止めた。今また彼が次なるターゲットとしてイラン、北朝鮮をとらえ、その脅威を国民に知らしめようとしていることは十分に考えられるのだ。


イランは“テロに対する戦い”の3番目のターゲット?


ブッシュ大統領は今後、テヘランへ核開発の中止を要求するなど、国際社会の圧力を利用しながらイランに矛先を向けていくだろう。イラクの時のように軍事力に頼ることはまずないが(イランの人口はイラクの3倍なので)、ブッシュはイラクに駐留している米軍の力や、アメリカ在住のイラン人難民、移民などのテレビ放送を通した本国への呼びかけなどを使って、現政権へプレッシャーをかけていくと思われる。
日本関連で障害になりうる問題はといえば、イランの原油開発に対する投資が考えられる。このような投資は1996年に施行され、賛否両論を巻き起こしたD'Amato Amendment (イランの原油開発に投資する外国資本に対して懲罰を課すことをうたったもの)に反するものであり、日本の企業といえども対象外ではない。制裁としては、海外へ/海外からの銀行の資金調達の休止から、海外企業への個人投資の禁止、米国債引き受け禁止、その他多岐に及んでいる。この法案に最終的にサインしたのはクリントン大統領だが、過去にこの法案の実施について取りざたされる度にヨーロッパ各国の反対を招き、結局クリントンは3度にわたって実施を見送ってきている。しかしブッシュが同じ態度でこの法案に臨むとは限らない。
どう転ぶにしても、ブッシュがイランの脅威について強調することは十分考えられる。まるで1979年の(訳注: テヘランで発生した)アメリカ大使館員人質事件での危機的状況をほうふつとさせるようだ。あの時、アメリカの一般市民の中に、イラン政府に対する深い不信の心が芽生えたのだった。


北朝鮮: ブッシュの一番の課題


一方、すでに核兵器を所有していると思われる北朝鮮に対しては、ブッシュ政権はあの手この手を使ってプレッシャーをかけるというよりは、外交努力によってその目的を達成するつもりであると思われる。北朝鮮に対する中国からの圧力も、イランの場合とは違って、外交的解決への道を開く要素になるだろう。中国は、北朝鮮からの大量の難民問題や、韓国との貿易実態(韓国はアメリカ、日本に次ぐ貿易相手国)などをかんがみて、北朝鮮の手綱を握りたいところなのだ。
ブッシュ政権の右派たちは、北朝鮮に対し厳しい態度で臨むべきだと主張している。少しでも譲歩などすれば、1994年、クリントン政権時代に両国で合意に達した枠組みを北朝鮮が破るのを受け入れることになるからだ。しかし、おそらくブッシュ政権は、こういった反対の声を抑え、北朝鮮が核開発を中止することを条件に、安全保障を約束するだろう。しかし、ここに食糧・燃料面での援助が含まれるとは断言できないし、ブッシュはまず完全な核査察の受け入れを要求すると思われる。強硬路線派たちは、北朝鮮を経済的に崩壊させるためには人的援助も行ってはならないと唱える。彼らに、ブッシュが安全保障を約束するのを止めることはおそらくできないが、人的援助を妨害することについては、思い通りにできるだろう。


その間、民主党員はディーン支持に


ブッシュの救済は、最近急速に支持を集めるようになった前バーモント州知事のハワード・ディーンが民主党党首選に勝つかどうかにかかっているといえるかもしれない。ディーンは、イラク戦にはっきり反対の立場をとっており、テロ戦については極めて穏健派である。彼はまた、同性愛者の市民団体とその権利(同性愛者同士の結婚など)に対するサポーターでもある。その思想はリベラルであるので、アメリカ合衆国の大統領選で勝つのは難しいだろうが、民主党の指名候補の座にはつけるかもしれない。
現在ディーンは、アイオワで元州議会議長のディック・ゲッパート(彼はアイオワに隣接するミズーリ州出身)をリードしている。ゲッパートが党首選に残るためにはアイオワで勝たねばならないのだが、ディーンはここで5ポイントの差をつけ優位に立っている。
マサチューセッツ州知事のジョン・ケリーも、近隣のニューハンプシャー州でディーン相手に苦戦している。ここで勝たねばならないのに、お隣バーモント州出身のディーンに12ポイントも先を越されているのだ。
民主党3番目の競争相手、ノースカロライナ州知事のジョン・エドワーズにとっても状況は同じだ。サウスカロライナで勝たなければならない彼と、ディーンは現在同ポイントである。
ディーンがここまで台頭してきた理由として、インターネットによる大々的キャンペーンが挙げられる。Vote.comに習い、彼はオンラインでかなりの数のスタッフやボランティア、支持者や献金者を集め、また平和運動に携わる人々、ゲイコミュニティーなどにもコンタクトを取り、草の根的に支持者を集めることに成功した。結果、全国ネットでの選挙ベースができあがり、選挙資金1,700万ドル(日本円で約20億円)を集めるまでに至った。
このインターネットをベースにした実質ただの選挙キャンペーンによって、ディーンは献金を選挙運動のためのイベントなどではなく、実際の選挙準備のために使うことができる。また彼を支持する献金者たちの1人あたりの出費額は100ドル程度と比較的少額なため、これから選挙が進むにつれて1人あたりの献金額がさらに増えることも考えられる。それに引きかえ、ほかの民主党の候補者たちを支える献金者たちの多くは選挙で規定している2,000ドルぎりぎりまで出しているため、これ以上献金することができないでいるのだ。


民主党はゴアかヒラリーに望みを託している


こうしたブッシュの弱さが民主党に希望をもたらしてはいるものの、ディーンの強さは逆に彼らを窮地に立たせてもいる。彼が民主党リベラル系指名候補の座につくことはありえるかもしれないが、11月の大統領選でブッシュを負かすことは、おそらくできないからだ。 結果、民主党へ資金援助している大物たちの多くが、2004年の大統領選にヒラリー・クリントンかアル・ゴアを推すだろう。現在彼らは、立候補の意思を表明してはいないが、実際その気になっていることはおそらく間違いない。民主党内での投票で、ヒラリーは圧倒的に、ゴアはそこそこ優勢という状態だが、両者のうちどちらかがおそらく大統領選の候補者に選ばれ、ブッシュの強力なライバルとなるだろう。(現時点では、ヒラリーの方が候補者として選ばれる確率が高いといわれているが、ゴアが候補者として選ばれたなら、選挙に勝つ確率は彼の方が高いだろうといわれている)
ヒラリーは、ゴアが立候補しない限り動かないだろう。彼女は、ブッシュが2年の任期を終える2008年に出馬しようと狙っているからだ。だから今回はむしろブッシュの再選を願っているのだ(本人は決して認めたがらないけれど)。ディーンが民主党党首選に勝ったとしても、ヒラリーにとっては一向にかまわない。彼が大統領選でブッシュを打ち負かすことはまずないのだから。
しかし、ゴアが出馬するとなると話は違ってくる。彼はブッシュに勝つことができるからだ。そうなると、ゴアが2008年の再選挙に臨むことになり、ヒラリーは2012年まで待たねばならなくなる。
その時、彼女は65歳、政治の表舞台から離れて12年もたっていることになる。また、彼女が2012年に立候補するということは、そのために知事の座をあきらめねばならないということをも意味している。これに対して、もし2008年に立候補すれば、落選したとしても知事のポジションだけは確保しておけるのだ。

−ディック・モリス

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