最終更新: 2008/08/20 11:44

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ディック・モリス氏

ディック・モリス氏略歴
コロンビア大学卒業。クリントン大統領の元選挙参謀。

選挙戦略家として、1996年の米大統領選挙でらつ腕を奮い、クリントン大統領再選に貢献した。現在、インターネット上でさまざまな投票を募るVote.comのPresidentをつとめるほか、FOXニュースチャンネルのコメンテーターやニューヨーク・ポスト紙へのコラム執筆などの活動を行っている。著書「オーバル・オフィス(大統領執務室)」(扶桑社刊)でホワイトハウスの内部事情を克明に描いた

モリス・レポート 2003年12月

ディーンは民主党候補指名獲得へとばく進、しかしブッシュも負けてはいない

ハワード・ディーンに対するアル・ゴアの後押しによって、ほかの連中が民主党候補者となる望みはほとんど絶たれることとなる。
なぜゴアがそうしたかって?
それは、もう1度何がしかの存在になって、クリントンから党を引き離すためである。ヒラリーに対する行き過ぎた注目に、そして自分がのけ者にされていることに憤慨し、ゴアはもう1度アメリカの政治界に舞い戻ることにしたのである。一気に、そして大胆に。
ホワイトハウスでの最後の2年間、ゴアには、自分がますます、わきへ押しのけられてきたのがわかっていた。クリントンの意識が、ヒラリーに、彼女を上院に選出させることに集中していったからである。大統領選での敗北以来、前進するヒラリーに対して自分が政治の表舞台からかき消えようとしているのを目にしてきたのである。今、彼は左派のお気に入りとしてディーンを早い時期に、公的に、そしてしっかりとサポートすることによって、ヒラリーを出し抜くつもりでいるのだ。
11月の選挙など、もはやどうでもいい。われわれの目の前に繰り広げられているのは、民主党の覇権をめぐる戦いなのだ。こちらのコーナーにはクリントンが陣取り、対戦相手を次から次へとリング中央に送り出してきてはディーンの党制覇を阻止しようとする。最初はジョー・リーバーマンが出て、足を引きずりながら帰っていった。それからウェスリー・クラークが、予備選挙から逃げ出し試合をあきらめた。今、ジョン・ケリーはニューハンプシャーであまりにも苦戦していて、カウントを取られるのを待つのみだ。

2カ月前、ハワード・ディーンはノーマークの候補者だった。彼が世論調査で頭角を現してきたのは、主にインターネットを使った資金集めの成功によって注目を集めたからだった。その間、民主党の対抗馬たちは彼をたたきのめそうとしてきた。けれども彼はそんな攻撃に負けるどころか、今さらにはっきりとトップの座に躍り出ようとしているのだ。
民主党指名候補、ディック・ゲッパートとジョン・ケリーはいらついて、考え得るかぎりの事柄を挙げ、ディーンを非難している。
  • ディーンは“南部連合旗をナンバープレートにつけているすべての人”に投票してほしいと述べた。ゲッパートとケリーは、人種差別の象徴を選挙運動に利用しており、謝罪すべきだとディーンに激しく迫った。
  • ディーンはバーモント知事時代の行政記録を公開することを拒否した。彼の敵方は彼を“ニクソン流”で秘密主義であるとし、記録の公開を要求した。
  • ディーンは、州が中絶を規制しても良いという方向に傾いているようにも思われるが、これは民主党左派の中では異端である。
  • ウェスリー・クラーク将軍は、ディーンがベトナム戦争中に徴兵をずるして逃れたと攻撃した。彼が背中を痛めて従軍免除になった直後にスキーに出かけているというのである。
しかし、前バーモント州知事はこういった数々の攻撃に屈せず、さらにパワーを強めている。 彼は今や攻撃など物ともせず、アイオワ党員集会ではゲッパート相手に26対22でリードし、ニューハンプシャーではジョン・ケリーを25ポイント以上もリードしているのだ。さらに彼はサウス・カロライナでもエドワーズをリードしており、どうやらこの3人の近隣のライバルを彼らが勝たねばならない場所で押し止め、さらにノックアウトしそうな勢いなのである。

ディーンに投票する有権者たちは、どこまでも彼と共にある。彼らがアメリカで最もリベラルな党の中でも最もリベラルな3分の1を占めるのだ。この10%が文字通り、現在アメリカ政治という胴体を振り回しているしっぽなのである。彼ら投票者は徴兵忌避を歓迎し、ハワード・ディーンがイラク戦にこれまで一貫して反対してきているのを知っているのだ。
ディーン以前に左派の寵児(ちょうじ)だったジョン・ケリーは戦争決行に1票を投じ、これによってディーンが彼よりもっと左にシフトし、彼から有権者の支持を奪うことを許した。 ゲッパート、リーバーマン、それにエドワードといったライバルに対して左の位置を保持できる自信のあったケリーは、リベラルの連中の支持を獲得しようとする代わりにブッシュをたたこうと中道に進み出たが、これがちょっと早過ぎた。彼は中道に出て共和党員を打とうとする前に、左にとどまって候補者の指名を獲得すべきだったのだ。
戦争反対将軍としてメディアで取りざたされたウェスリー・クラーク将軍は、アイオワ党大会を戦わないと決めたことで、基本的戦略ミスを犯した。これは、その1週間前のワシントンDCでの予備選挙を除いては、ことし最初の候補者指名関連行事だったのである。彼がアイオワとニューハンプシャーで勝ってディーンの勢いに対抗することは望めなかったし、その後の予備選挙に登場し、勝てるなんてことは妄想に過ぎなかった。


ブッシュは力を増す


ブッシュへの支持率はいまだ低迷しているが(賛成は52%。彼は他の民主党員と比較してわずかに43対36の差で支持されているにすぎない)、彼は最近命を取りとめたように思える。
彼がイラクで兵士たちに感謝祭の七面鳥を振る舞ったことは大きかった。しかし、彼が上向きになっているのにはもっと本質的な理由があるのだ。
6〜9月の四半期の経済成長率が8.2%の伸びを見せていることや、新たな雇用の機会が増えたことを考えれば、どうやらブッシュが再選挙に立つ間、景気後退は起こらないように思える。
さらにブッシュは、処方せん薬を対象にしたメディケア福祉について共和党内での同意を得ることに成功した。これは、民主党が過去20年もの間、選挙運動のより所としてきた政策である。ちょうど1996年の選挙直前に、共和党のおはこ政策だったあの歴史的福祉改革法案にクリントンがサインしたように(社会福祉への予算は現在60%もダウンしている)、ブッシュは民主党の最も得意としている政策を選挙直前に横取りしてしまったのだ。


イラクはブッシュの将来を決めるだろう


しかし、肝心な疑問は残る。ブッシュは選挙の前にイラクから軍を撤退するのだろうか? リンドン・ジョンソンにリチャード・ニクソン、彼はこのどちらのやり方に倣うのか? 選挙が近づいてくる。ブッシュは決断しなければならない。
1967年の終わりから翌年初めにかけて大衆のベトナム戦争支持が薄らいできた時、ジョンソンは兵を引き上げるか、あくまで残って戦うかの選択を迫られた。彼はベトナムに残ることを選び、兵を増強し、さらなる爆撃を行うかけに出た。終わりの見えない状態に、次第に多くの有権者たちがジョンソンに背を向け、平和主義者のユージーン・マッカーシーやロバート・ケネディを支持するようになった。政治的危機を感じたジョンソンはタオルを投げ、自らの大統領生命を奪った戦争を終結させる代わりに、その職を退くことを選んだ。
4年の後、リチャード・ニクソンはもっと賢く立ち回った。彼は在職して2年目までにベトナムでの戦いをますますエスカレートさせ、反戦運動の熱は最高潮に達した。平和運動家のジョージ・マクガバンが民主党候補の指名を受けて、大統領の座にあるニクソンを本気で脅かす存在として浮上してきた。ジョンソンと違い、ニクソンは危険が迫っていることを悟るとベトナムから兵を撤収し始め、数年来の戦局の悪化を押しとどめた。彼は徴兵をくじびき制にし、これによって選抜徴兵期間を1年に短縮し、いまだ召集を受けていない者にはくじ番号が高い者の徴兵を後回しにすると保証して、過半数の者を安心させた(例えばビル・クリントンなどは、この時胸をなでおろしたうちの1人だ)。結果はどうなったかって?
1972年までには戦争はそれ自体の政治的影響力を失い、マクガバンなど問題にならなくなった。選挙直前にヘンリー・キッシンジャーが「平和がやってきた」と宣言した時、大勝利はニクソンの手中にあったのだ。
ブッシュは、イラクから全体の3万ないし4万を残した兵を撤退させ、戦闘をイラク軍と警察の力に任せなければならない。残留部隊は、グアンタナモ基地のような十分に設備も防備も整った所に陣取るべきだ。そこで危険を避けながら、われらが軍隊はサダムと彼のバース党のチンピラたちが再び権力を握ることのないようにしなければならない。そういった基地から彼らはアメリカの力をイラク全土に反映させることができるのだ。

もしも毎週イラクで多くのアメリカ人が殺されることになったとしたら、アメリカ人の忍耐力はすり減ってしまうだろうか? もちろんそうだろう。10%かそこらの戦争反対を唱えるディーン派リベラルたちに加えて、さらに25%の人々が、外国による介入に反対の投票をしている。こういった昔ながらの孤立派が左派と手を組んだら、ブッシュの再選も非常に難しくなる可能性はある。 一方、民主党は、ブッシュの逃げ道をふさぐよう弾幕を張っている。ケリーはブッシュを“あわてて逃げ出す”つもりだと非難したし、ヒラリー・クリントンは戦争の行使について“政治的予定表”にのっとっているのだと言った。
ハト派が、選挙での激闘を予測してタカ派をやっつけようとしているなんて、何て皮肉なことだろう!


ディーンは中道へ進めるか?


ハワード・ディーンは民主党候補者指名選で勝ったあと、中道に戻れるだろうか?
もちろん彼はそうするつもりだろう。すでに彼は、ディック・ゲッパートの労働組合地盤に割って入るため、経済問題についてキャンペーンを行っている。しかし、イラク問題では中道には戻れない。彼はただ戦争が悪化するのを願うしかないのだ。
けれども、ほかの2つの問題でもディーンは同様に頭を悩ませている。
マサチューセッツ州最高裁は、同性愛者の結婚を阻む権利は議会にはないとの決定を下し、彼に思わぬ勝利をもたらしたが、これによって同性愛結婚の問題が大統領選のど真ん中に放り投げられることになる。
ディーンはこの問題を“シビル・ユニオン(市民の結合)” −実質的には結婚−
について語ることにすり替えようとしている。彼はバーモント知事時代、国内で初めてのシビル・ユニオン法案にサインした。けれども投票者の多くが、次第にこの婉曲(えんきょく)語法で同性愛婚とシビル・ユニオンが同義にされていることに気がつくだろう。
国は同性愛婚に対し、2対1以上の差で反対しており、この問題がそれぞれの党の根本的な違いを明らかにしている。アメリカ人の半分が定期的に教会やその他宗教的施設を訪れており、最近の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」の調査によると、これらの人々は2対1の割合で共和党に投票している。同様の割合で、教会へ行かない面々は民主党に投票するのだ。
ブッシュはこの点でディーンを追い詰め、選挙が終盤になれば息の根を止めようとするだろう。

2番目のディーンにとって真にやっかいな問題は税金である。ブッシュの減税の全面撤廃を誓約すれば、次の大統領は当然増税に同意しているとみなされる。ことに減税が2006年に“サンセット”(自然失効)を迎えるとあれば、ブッシュは減税を選挙の主要争点にできるのである。 また過去に、ディーンはイスラエル問題で、現政権はイスラエルとパレスチナそれぞれへの対応をもっと“同等”にすべきだと批判したことでも不審に思われている。アメリカ人はテロリストと民主主義者と公平につきあうことを望む候補者なんかきっと欲していないだろう。ユダヤ人の人口密度が高く、投票の結果を左右するだろうニューヨーク、カリフォルニア、アリゾナ、そしてフロリダではディーンの立場は難しくなるかもしれない。


ヒラリーは何を目論んでいるのか?


ヒラリー・クリントンは感謝祭の間にイラクを訪れたり、テレビのトーク番組でブッシュのイラク政策を批判したりと何かと物議をかもしている。
中には彼女が2004年の大統領選に出馬するつもりなのかとの声もある。おそらくそれはないだろう。党大会での代議員は、州の予備選挙での第1回目の投票と同じ票を投じることが法で定められている。ヒラリーが、本人も繰り返している通り、どの予備選挙にも出馬する気がないので、現在の候補者のうちの1人、おそらくディーンが第1回投票で大規模得票し、ヒラリーが出てくる妨げとなるに違いない。
じゃ、どうして彼女はそんなに目立とうとしているのか?
第1に、彼女は注目を集めたくてしょうがない。夫の影になること数年、彼女にやっと自分自身として発言するチャンスが回ってきたのだ。これじゃ自分を抑えることはできない。
次に、彼女は民主党の流れが明らかに左寄りになってきていることを感じ取っている。ディーンが勢いをつけてきたように、アル・フランクリンやマイケル・ムーアといった連中の著作がベストセラーリストの上位を占めているように、彼女の夫が勝利した時のような民主党指導者会議を中心とした中道路線がもはや、はやらないのは明らかなのだ。必死で新しい波に乗り、現在の流れよりも先へ行こうとしている彼女だからこそ、声を大にして戦争に反対し、自分を左派の一番のお気に入り候補としておきたいのだ。
3番目に、うがった見方をすれば、彼女はブッシュに負けてほしくない。はっきり言って、2004年から2008年の間、どの民主党員にもホワイトハウスに入ってもらいたくないのだ。そうすれば、2008年に彼女は自分のところの党首と予備選挙で争わずに出馬できるからであって、そうでなければ彼女は2012年まで待たねばならないだろう。
最後に、彼女はブッシュにそれほど先を行ってほしくない。もしもブッシュが圧勝したら、彼はおそらく民主党による議事妨害を阻止できるくらいの数の上院議員を集めてしまうだろう。だから、彼女は兵力の増員を要求したり、米軍の撤退の可能性が取りざたされれば、「政治的意図が見え見えだ」と批判したりと、ブッシュをなるべくイラク問題にかかわられておく腹なのだ。

また、ヒラリーは党内での自分の影響力を確たるものにするためのキャンペーン資金もひそかに集めている。公的献金は2000ドルかそれ以下と定められているために、十分な運営資金を集めることができず、共和党にひけをとったため、リベラル派はACTというグループを立ち上げた。この組織は9,400万ドルの規制対象外資金を集めるとされ、そのうちの2,000万ドルはすでにジョージ・ソロスとピーター・ルイスといった億万長者によって約束されている。民主党全国委員会よりもより豊かに、ヒラリーの個人的ツールとして、彼女が承認する人物に資金提供することができるのだ。


予測


ディーンはアイオワで勝利し、ゲッパートをレースからたたき出すだろう。勝利の勢いはニューハンプシャーでのもっと大きな勝利へと彼を後押しし、ここでケリーの息の根を止めるだろう。
そして民主党は、2月3日のアリゾナ、サウスカロライナ、オクラホマ、ミズーリ、そしてデラウェアでの投票がディーンを指名させないための最後の頼みとばかりに、ウェスリー・クラーク将軍かジョー・リーバーマン上院議員を盛り立てにかかるだろう。
しかしディーンは、サウスカロライナで有利な立場にあり、おそらくアリゾナ、デラウェア、オクラホマでも勝つだろう。ゲッパートは自分の州であるミズーリを守るだろうが、それでどうなるだろう。
こうしてすべては終わり、ディーンが3月初めまでに候補者として指名されるだろう。

−ディック・モリス

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