最終更新: 2008/12/05 21:22

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

ワシントンリポート May. 2006

イラク関連の悪いニュースはとどまることを知らず、共和党が2001年に政権を握って以来初めて、ジョージ・ブッシュ大統領とその執行部が守りの姿勢に入っている。ジェームズ・ベイカー元国務長官が率いるイラク戦争についての新たな勉強会の発足は、大統領をパニックに陥れる要因の1つになりそうである。

ベイカーがイラク侵攻に反対したことは良く知られているし、息子よりも、父のジョージ・H・W・ブッシュ(第41代大統領)とはるかに近い関係にあることはもっとよく知られている。彼が“ネオコン族”や、ポール・ウォルフォウィッツ、ダグラス・フェイス、「スクーター」リビーなどといった、2001年9月11日以降、イラク侵攻を強力に推し進めた親イスラエル派連中の過剰な影響力を個人的に批判していたことも周知のことである。

現大統領のブッシュは、就任時、父の息子であるだけでなく、自身の明確で独立した外交政策があることを示そうとの強い思いを持っていた。ブレント・スコウクロフト将軍や、ジェームズ・ベイカーほか、父となじみの深いアドバイザーたちからの私的・公的助言を無視し、自らの側近であるコリン・パウエル国務長官の忠告が父の影響を受けたものであると思われた場合には、それを退けもした。

就任初期のころの記者会見で、父からアドバイスを受けたのかと聞かれたブッシュが、自分は別の父、つまり天の神からアドバイスを受けていると答えたのは有名な話である。言い換えれば、若い方のブッシュは、己自身の道を行く姿を世界にアピールするために一生懸命だったということだ。

こういった事情をふまえると、大統領が、このベイカーの新たな任務着任について承諾したというのは、屈辱的にも失敗を認めたということだ。アメリカはイラク戦に負けつつあると、この組織が結論し、アメリカが自国のメンツを保ったまま、戦いから足を引く方法についての提言をするのは、ほとんど必至である。

そうなると、1968年、ベトナム戦争時のリンドン・ジョンソン政権に対して、ディーン・アチソンとクラーク・クリフォードが果たした役割と似たような関係が生じてくることになる。この年、クリフォードは国防長官になり、ジョンソン大統領は2期目への出馬をあきらめた。世論が自身と戦争とに、はっきりと背を向け、メンツまるつぶれとなったのを悟ったからである。

ベイカーたちは6月に、アメリカがイラクから撤退を始めるべきとの明確な意見をまとめるだろう。その結果、いくつかの事態の展開が予想される。ドナルド・ラムズフェルド国防長官は辞任し、ベイカー自身がその職につく可能性がある。また、タカ派のキーマンであるチェイニー副大統領が、健康上の理由で辞めることも考えられる。現国務長官のコンドリーザ・ライスが代わりにに副大統領に任命されてもおかしくないし、そうなると、女性で初めて、そしてアフリカ系アメリカ人で初めてこの地位につくことになる。もちろんこれは、2008年の大統領選で、彼女が共和党の最有力候補になるということを示している。

タイミングは重要だ。共和党が上院・下院で力を持ち続けられるかどうかは、11月7日の議会選挙の結果にかかっている。ブッシュは、世評を回復し、実行可能な形で、イラクでの“勝利”(つまりは撤退)を示すために、素早く行動しなければならない。いちかばちかというところなのだ。

11月に下院で民主党が過半数を獲得すれば、いかにしてアメリカがこの戦争に突入したのかを検証するための調査委員会が結成され、最終的に証拠書類の提出や証人喚問が行われるだろう。ネオコンがまきちらしたイラクの大量破壊兵器についてのうそも明らかになるだろう。
また、すべての事実が明るみに出た時、ブッシュ大統領本人に対する弾劾手続きが始まるということも考えられる。この悪夢を思うと、ブッシュは夜も眠れないのだ。

最後にひとこと。前回のレポートでお伝えした親イスラエルロビー勢力についてのウォルトとミアシャイマーによるリポートだが、これがワシントンの関係筋の間に予想通りの影響を及ぼしている。アラン・ダーショウィッツやエリオット・コーエンら、典型的親イスラエル派知識人たちがおおっぴらに攻撃する一方で、ニューヨークタイムズのOp-Ed欄(社説の向かい側の特集ページ)でトニー・ジュドが、また、ワシントンポストのコラムニスト、リチャード・コーエンが強力な擁護にまわっている。彼らは、いずれもそうそうたるユダヤ人ライターである。この件については、後日さらにお伝えしよう。

−ジョージ・パッカード

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