最終更新: 2008/08/20 12:00

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

ワシントンリポート Nov. 2006

11月7日の中間選挙では、民主党が少なくとも下院の過半数を占めそうな気配だ。ジョージ・ブッシュ大統領にとっての悪夢となるだろう。専門家の中には、上下両院ともに民主党が抑えるとの見方もあるが、わたしは、それはどうかと思う。現職という力(とそこに流れ込むお金)は甚大なため、共和党を上院から追い出すのは極めて難しいと思われるからだ。

しかし、片方しか押さえられなくても、下院の委員長やその他大部分は民主党ということになるわけだ。だから、いかにしてイラク戦争が始められたのか、ブッシュとチェイニーがどんなうそっぱち情報を使って、この国を戦争に追い込んだのか、ウサマ・ビン・ラディン捜索がいかに不手際なものだったか、イラク戦争がどれだけお粗末に計画・実行されたのか、また、どういうわけで米軍がこの脱出困難な泥沼にはまりこんでしまったのか、こういった事柄を調査するためのおそらく複数の委員会が発足することになるだろう。

委員会の調査官たちは、召喚状の力、つまり証人から証言をとって文書化し、彼らが拒んだ場合には、刑務所に入れることのできる権限を持つ。今のところ、サダム・フセインのイラクの脅威を誇張し、ペンタゴンに特別ユニットを創設させたドナルド・ラムズフェルド国防長官とポール・ウォルフォウィッツ副長官の役割について誰も問いつめてはいない。しかし、民主党が過半数を占めれば、これは一変し、ブッシュとチェイニーにとっては非常に不名誉なこととなるはずだ。

議会の民主党員たちが連結しているとはとてもいえない。少なくとも一派は、自分たちがイラク戦争に反対することで、共和党の“スピン・マシーン”(訳注 spin machine: 政治家の広報担当など、情報を操作したり自分たちに有利な形で流す者)ことカール・ローブから敗北主義の“負け犬”との烙印(らくいん)を押されることを恐れている。彼らは1972年、米軍のベトナムからの撤退を呼びかけたジョージ・マクガバン上院議員がリチャード・ニクソンにどれだけ惨敗したかを憶えており、大急ぎで逃げ出したがっていると非難されたくないのだ。

ナンシー・ペローシは、民主党が過半数を勝てば、下院の議長になるはずなのだが、彼女が率いる別の民主党グループは、イラク戦争は今やまったく支持されず、アメリカ国民の大多数が、どんな状況であれ、とにかくここから抜け出したいと思っていると感じている。男性女性あわせて3,000人にものぼろうとする若きアメリカ兵の命が奪われ、イラクが終わりの見えない宗派間の戦いのまっただ中だとの見出しが毎日のニュースを飾る今、彼らは撤退が大いに支持され、自分たちを2008年の大統領選で優位に導くと信じているのだ。

その2008年大統領選の候補者として、2つの新たな名前が浮かび上がってきている。イリノイ州の民主党上院議員バラク・オバマは、アフリカ人の父と白人の母を持ち、ハーバード法科大学を優秀な成績で卒業しているが、現在、選挙への出馬を検討しているという。

ニューヨーク市の億万長者市長、マイケル・ブルームバーグが立候補するかもしれないという話には、さらに興味をそそられる。もし彼が出馬を決めた場合、3番目の党から出るということになるはずだが、これまでのアメリカの歴史において、第3党から出た候補者が勝ったことはないのだ。 それでも、共和党と民主党に幻滅しきっているアメリカ国民にとって、第3党浮上の機は熟していると見る識者は多い。世論調査によれば、有権者が望んでいるのは、昨今の政治討論の場でおなじみとなったののしり合いや嫌々ながらの連携ではなく、保険医療に対する実際的で新しい取り組みであり、社会保障システムを是正したり、税制をもっと中間所得層の家庭に公平なものに改め、公立学校を改善していくことなのだ。

ワシントンの次なる大きなイベントは、ベイカー・ハミルトンの研究会によるイラク戦争の調査結果の報告だが、これは11月26日あたり、ちょうど感謝祭の連休を過ぎたころに行われるだろう。内部関係者たちは、ジェームズ・ベイカーが、この戦争の漸次“国際化”と、イスラエルとパレスチナの長期紛争を解決するための新しいロードマップを皮切りにした中東和平全体を視野に入れた包括的試みについて、ここで提言するだろうとみている。

わたし自身は今でも、ラムズフェルド国防長官はおそらく、その報告書が出されたあとに更迭され、代わりにベイカーが後任として納まるのではないかと考えている。元国務長官で、イラク研究会のメンバーでもあるジョージ・シュルツが何らかの役職でワシントンに戻ってくるのではないかとみる向きもあるが、わたしは、これは実現しないと思う。最近のシュルツの発言を聞いたが、彼はイラク戦を強力に支持しており、それに少々ボケかかっているようだからだ。引き続き見ていこう。

−ジョージ・パッカード

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