ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長
1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。
ワシントンリポート Mar. 2007
2001年の就任以来はじめて、ジョージ・ブッシュ大統領が、北朝鮮の核兵器プログラム終結のための6カ国協議の合意達成に向けて本腰を入れている。
過去において、彼は北朝鮮に対して強硬路線をとり、1994年にクリントン大統領が彼らと結んだ取り決めは役立たずだったと示すよう、ディック・チェイニー副大統領やネオコンたちに説き伏せられてきた。彼らが、北朝鮮をイラン、イラクとまとめて“悪の枢軸”とするよう大統領を説得し、また北朝鮮との2カ国協議に応じないことを提言したのだ。
今やしかし、政権内の力関係は変わった。ラムズフェルドは去り、チェイニーはイラクで信用を失った。北朝鮮問題はコンドリーザ・ライス国務長官の責任下にある。彼女は、一般人としての生活に戻る前、あと2年しかない任期中に何が何でも勝ち星を1つあげたい。イラク戦のごたごたに対する非難がじわじわと迫る中、北朝鮮との合意が外交官としての腕前を証明できる唯一最善にして最後の策だと考えているのだ。
ライスは、国務次官で北朝鮮に対する手厳しい強硬論者だったジョン・ボルトンを巧みに動かして国連大使に着任させた。ボルトンは上院の承認を受けられなかったので、今ではその職を退いている。相変わらず北朝鮮との新たな暫定的合意を批判しているが、それを邪魔する力はない。
ブッシュは、ライスを信じて頼りにしている(ほかに誰が信じられるだろう?)。そのお返しに、彼女はジョン・ネグロポンテを配下の国務副長官に抜擢した。彼は、北東アジアの安全保障問題なども手がけることになるベテラン外交官で、交渉のノウハウを心得た真のプロである。極右ネオコンからの信頼も申し分ないので、ブッシュの右方向での失敗をカバーするだろう。
ライスはまた、クリストファー・ヒル国務次官補が北朝鮮との妥協点を探り、単身で北朝鮮側と会うことを許可した。彼の前任者であるジム・ケリーには決して許されなかったことである。
ヒルは、北朝鮮当局に“アメとムチ”、つまり報酬と罰を与える権限をもたされた。これが明らかに功を奏して、これからの60日間について、危うくはあるけれども実際的な合意が成立したのだ。金正日と軍部の連中が駆け引きに応じるかどうかは誰にもわからない。けれども、少なくともスタート地点までは来たのだ。
目を見張るべきは、ヒルが、いまだにホワイトハウスや世論に対して影響力を持つ国内の生え抜きの外交政策グループに向かってこの合意を積極的に“売り込む”よう後押しされていることである。今週、彼は、外交問題評議会やCSIS(戦略国際問題研究所)、ブルッキングス研究所他のシンクタンクに向けて話をしている。これは、国務省が協議の進展を望んでおり、後ろで、チェイニーとその一味が動くのを阻止しようとしている証拠である。
さらに重要なのは、この合意の受け入れを促す肩入れとして、ヘンリー・キッシンジャーとマデリーン・オルブライトの名が挙がっていることである。クリントン政権が終わりを迎えようとしていた2000年晩秋に、オルブライトが金正日と会って、もう少しで交渉締結というところまでいったのを皆さんも覚えているだろう。
来週月曜3月5日には、全米外交政策会議が内密・非公式に開催する集まりがニューヨークで開かれる。北朝鮮代表団の7人のメンバーのほか、キッシンジャー(共和党)やオルブライト(民主党)、ほかに米政府の2人の代表なども出席する予定である。キッシンジャーは、合意が理にかなうものだと北朝鮮側を強く説得すると思われる。同時に、引き続き自らの影響力をもって、ブッシュに、すべてはうまくいっていると保証するだろう。
その後で北朝鮮側との公式会談が行われることになる。彼らが次のステップを踏むことができるかどうかについては未知数だが、53%の米国民がイラクからの米軍撤退期限の設定を求めている今、ブッシュは大喜びで論題を変え、意味ある合意に達することで、能力ある政治家という立場にあやかろうとするはずだ。
皮肉にも悲しいのは、彼には5年前、北朝鮮が核兵器を保有する前にこの交渉ができたはずだということなのである。
−ジョージ・パッカード
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