最終更新: 2008/12/05 20:15

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

ワシントンリポート Apr. 2007

ここ10年間で初めてのことだが、アメリカと日本の間の緊張が高まっている。安倍首相が、“慰安婦”や靖国神社、そして北朝鮮問題に関する6カ国協議についてのコメントで、アメリカの右派、左派両翼を怒らせているのだ。

普段なら日本を擁護するはずの知日派も、安倍の慰安婦についての不必要な発言に首をかしげている。彼が、拉致問題で右派に迎合する形で実権を得たということはわかっているが、彼らは、安倍が1993年の河野洋平衆院議長の発言を素直に継承し、それでこの問題を終わりにしてもらいたいと考えているのだ。

1996年から現在に至るまで、クリントン、ブッシュ両大統領は、日米関係を強化し、歴代の日本の首相たちと個人的に緊密な関係を築くために最大限の努力を払ってきた。これはひとえに、北朝鮮の核への野望が背景にあったからである。

ひとたび北朝鮮が核開発に向けて動き出していることがわかってからは、1995年にミッキー・カンターと橋本 龍太郎首相との間で繰り広げられた日本車の輸入台数制限に関する激しい争いは脇に置かれ、二度と蒸し返されることはなかった。日米をして、翌1996年のナイ・リポートの発表、そして1997年から1998年にかけての防衛協力ガイドラインの改定へと向わせたのは、実に金正日の核兵器構想だったのである。2つの国がはじめて共通の脅威を認め、それに対抗する協力手段を講じることになったのだった。

2001年9月11日のアメリカに対する攻撃のあと、ブッシュ大統領は、小泉首相に、アフガニスタンとイラクのテロに対する戦争に加担してくれるよう呼びかけた。小泉首相はそれに迅速に応じ、ワシントンで多くの支持を勝ち取った。リチャード・アーミテージ国務副長官や国家安全保障会議のマイケル・グリーンは、日米があらゆるレベルで協力するよう休みなく働いたし、実際ブッシュは小泉を気に入っていた。

今われわれは、まったく別の状況に直面している。アーミテージとグリーンは政府を離れ、日本の利を職務として第一に考える高官は誰もいない。

ワシントン筋からすれば、安倍首相は、北京・ソウルへ友好訪問し、靖国神社参拝の可能性について口にしなかったことで、幸先の良いスタートを切ったかに見えた。しかし、ここ数週間というもの、この友好関係がすべて水の泡となり、今や4月26日の安倍首相のワシントン訪問がやっかいなことになりそうな気配である。タイミングの悪いことに、6カ国協議で拉致問題を取り扱うことに固執するあまり、日本は北東アジア諸国の連携から孤立する危険を冒している。

ブッシュ大統領の親しい友人であるトム・シーファー駐日アメリカ大使の発言に見られるように、太平洋戦争において日本政府が自らの兵士たちのために“慰安婦”を強要した事実はあったのであり、日本は彼らに対するより正式な謝罪を負っているというのが、現在のホワイトハウスの見方である。

アメリカのリベラル系メディアは、おしなべて日本に批判的で、残存している女性たちに同情的である。ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズでは、この件についての安倍のどっちつかずの対応を厳しく批判している。

右派でさえ、日本を気の毒に思ってはいない。保守派のフランシス・フクヤマが書いているように、「実際日本はドイツと違い、太平洋戦争における自らの責任に対して向き合おうとしてこなかった」のである。フクヤマは、日本の憲法9条改正を、はたしてアメリカが後押しし続けるべきなのかと疑問を投げかけている。「アメリカは、自らの望みに対して慎重になるべきだ。極東におけるアメリカの軍事的立場の一切は、自衛という日本の主権機能をアメリカが行使していることで、はじめて正当化される。日本が、その新たなナショナリズムを背景に、一方的に9条を改正すれば、実質アジア全体の中で孤立することになるだろう」。彼は、ブッシュ大統領が26日の安倍首相のワシントン訪問の際に、このナショナリズムの興隆について、注意を促したほうが良いのではないかと提案している。

これが、日本の友人とみなされるはずの保守派日系アメリカ人の発言なのである。安倍氏は真摯(しんし)に受け止めるべきであろう。

−ジョージ・パッカード

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