最終更新: 2008/08/20 12:08

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

ワシントンリポート July. 2007

ワシントンの数多い親日家たちは、先週の宮沢喜一元首相の訃報に深く打ち沈んだ。わたしも含め、彼と個人的に面識があった人々は、もちろんその卓越した英語力もさることながら、それ以上に、彼がアメリカ国内の政治や経済活動に関して、すこぶる博識だったことに感服したものだった。宮沢氏は、わが国の主流メディアとアカデミックな研究報告の双方をくまなく読んでおり、常に洞察力に富んだ鋭い質問を投げかけてきた。今の世代の政界トップに彼に匹敵するような人物はいないと思う。次の世代である今の30代、40代の台頭を待たねばならないのだろう。

民主党、カリフォルニア選出のマイク・ホンダ下院議員が提出した第2次世界大戦中の日本による慰安婦(性的奴隷)の扱いを非難する決議案が、十分な支持を得て、来週にも下院を通過するのが避けられない見通しだ。
6月14日以前は、ダン・イノウエ上院議員やトム・フォーリー元駐日大使ほかの努力によって、この道は食い止められたかに見えた。しかし14日、与野党の保守派や右派、その他右よりの著名な解説者といった人々が、釈明としてワシントン・ポストに打ち出した署名入りの全面広告が、当初の目的と全く逆の結果を生むこととなったのだった。

彼らはいったい何を考えていたのだろう?
その広告は、初めから失敗する宿命にあった。戦時中の状況が実際にどうであったかのいかんにかかわらず、これは日本に勝ち目のない問題なのだ。
あの広告を作った人々は、日本が大戦中、アメリカの敵であり、わたしたちの味方は中国で、年配のアメリカ人の中には、いまだ古い記憶を引きずっている人たちがいるのだということを忘れてしまったのではないだろうか。「中国には害がない」というイメージは、アメリカ人の間に古くからあり、そのルーツは1930年代の宣教師たちにまでさかのぼる。彼らとその後継者たちの影響だといえるのだ。
加えて、現在も生存している元慰安婦の女性たちの証言には信ぴょう性があり、この問題に対して世論を動かし、日本に反目させるに足るものだった。

産経新聞の小森氏は、ホンダ議員の管轄であるカリフォルニアの中国・韓国系アメリカ人が彼を後押ししていると書いている。これは本当かもしれないが、わたしには、わだかまった反日感情がもっと根深いものに思える。80年代の日本異質論者たちは、日本が信用ならないとのイメージを甦らせたけれど、その、大衆の心に深く刻み込まれた傷は、そう簡単には消えていないのである。

慰安婦問題は全米の女性の心の琴線に触れ、ナンシー・ペロシ下院議長がおおっぴらに決議採択を支持する恰好の理由を得る運びとなった。 ワシントンの日本大使館は6月20日、件の広告はあくまで民間人の発案であり、日本政府の見解を表したものではないとの声明文をわざわざ出した。この中では、安倍首相がつい最近のワシントン訪問時に述べた謝罪のメッセージが繰り返された。

しかし、これには説得力がなかった。安倍の発言がこれまでころころ変わってきたからであり、実際、広告発起人の多くが国会議員だったからである。ある意味で、これが状況をさらに悪くしたのだった。

さて、ホンダ議員の発議は、下院外交委員会で39対2という圧倒的大差で可決され、本会議へ送られることとなった。ここには、100人以上の共同発議者がいるため、可決は必至だろう。もちろんこの決議に拘束力はないし、上院では捨て置かれるだろう。それでも一連の出来事は、署名広告を出した右派の連中のアメリカ世論に対する理解が、いかに乏しいかを表している。

そもそも、米下院がこの問題に対して何らかの権限を持ち合わせているのかと問われれば、おそらく何もないだろう。しかし問題なのはそういうことではない。われわれが目にしているのは宣伝活動の大失敗なのであり、これは、あとを引くことだろう。この問題がこれっきりとしてスッパリ片付かないことで、親日派はがっかりなのである。

−ジョージ・パッカード

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