ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長
1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。
ワシントンリポート Jan. 2008
2008年最初のサプライズといえば、1月3日のバラク・オバマ民主党大統領候補のアイオワでの劇的勝利ということになるだろう。アイオワの有力日刊紙、デモイン・レジスターがきのう発表した最新の調査結果では、オバマがヒラリー・クリントンを7ポイントリードして、32%の支持率を獲得している。これは、通常の誤差の範囲を超える数字だ。もしこのまま、木曜日のアイオワ州党員集会まで持ち越せば、バラク・オバマは、アフリカ人を父に持つ男としてアメリカ史上初めて、ホワイトハウスの主になる可能性をまともに論じられた人物ということになるのだ。
続いて1月8日には、ニューハンプシャーでの予備選挙が行われるが、ここでも同様にオバマが優勢かどうかはまったくわからない。ヒラリーには、圧倒的な組織力と潤沢な資金、そして必要とあらば数百票、いやもしかしたら数千票を投じるために徒党を組んで州入りするボランティアがついている。もし、この州での結果が良くなければ、エドワーズは、じきにレースから脱落すると、わたしは見ている(ニューイングランド人は南部人があまり好きじゃないのだ)。
一方の共和党では、前アーカンソー知事のマイク・ハッカビーに注目したい。彼は、アイオワでは力を発するが、その後つまずくだろう。ミット・ロムニー前マサチューセッツ知事はアイオワではパッとしないが、ニューハンプシャーでは、ましな結果を残すだろう。ジョン・マケインに関しては謎である。彼はニューハンプシャーで健闘し、以後、手堅い第二候補として突き進むかもしれない。
しかし、もっとも興味をそそられるのは、ニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長が立候補するかどうかということだろう。以前にもブルームバーグ自身が言ったこととして書いたが、背が低く(5フィート9インチ: 約175cm)、離婚歴のあるユダヤ系億万長者が第三党から立候補するなどというのは“いつもの”年では考えられないことなのだ。
とはいえ、彼を蚊帳(かや)の外に置くのはたぶん間違いだ。ブルームバーグとそのアドバイザーたちは、もし勝利のチャンスが現実的になった場合には、3月に本格的キャンペーンを立ち上げられるよう、あらゆる対策を整えてきている。何が彼に立候補を決心させるのだろうか。
ブルームバーグにとっては、3月5日の時点で民主・共和両党のトップ候補が二極化し、その間のスペースが、全米最大都市の市長といったパワフルな経歴を持つ常識的な穏健派が勝つに十分であると確信できるかどうかが、おそらく立候補の決め手となるだろう。具体的には、例えば、もし共和党がハッカビーやロムニーといったすでに頭一つ抜きん出ている保守派を指名するような流れになれば、ブルームバーグ自身は、多くの共和党員が別の新たな候補者を欲していると判断するかもしれないし、またそうだとしたら、それは絶対にヒラリー・クリントンじゃないと考えるだろう。
ブルームバーグにあって他の候補者が足元にも及ばないのは、10億ドルつぎ込めるというそのキャンペーン資金だ(彼には100億から120億ドルの個人資産があるといわれている)。
第二に彼には、号令さえかかればすぐにも行動にかかることのできる政治コンサルタントやアドバイザーからなる優れたチームがついている。彼らは、全米50 州で州ごとに大幅に異なる条件で行われる選挙戦の実態を研究し、ブルームバーグを候補者名簿に載せるには、正確にどれだけの署名が必要なのかを把握しているのだ。
第三に、ブルームバーグは国内外のありとあらゆる政策に関して自らの立場をまとめた政策方針書を用意している。その多くは、共和党員と立場を同じくするものだ。
第四に、彼は銃規制や同性姻、堕胎、そのほか、ほとんどの候補が避けようとする深刻で激しい物議を醸すような問題についての発言を恐れない。
そして最後に、ブルームバーグは自身の力で、多大な成功を収めたビジネスマンから説得力を備えた政治家に転身したのである。
ここで本当にあったエピソードを紹介しよう。2週間前、おそらく共和党員であるニューヨークの銀行家6人が新年休暇前のランチに集まった際、現在立候補している大統領選候補者の中で、それぞれの好みを挙げていくこととなった。6人中5人がバラク・オバマだと言った。けれどもそこにブルームバーグの名が含まれた途端、6人全員が彼を一番のお気に入りだとして、もし彼が立候補するようなことがあれば、何を放り出してでも、直ちにその下で働くつもりだと言ったのである。こんな話が山ほどあり、ことしが“いつもの”大統領選の年とは違うことを物語っている。ジョージ・ブッシュは多くの、いやたぶんほとんどの旧来型共和党員を遠ざけたけれど、ブルームバーグのような、本来いなかったタイプの候補者に道を開いたのだった。
最後に一言。ブッシュ大統領とライス国務長官は、年度末とされた核計画の完全申告期限を守らなかった北朝鮮を“許した”ようである。2人は、(哀れな) ブッシュ時代の遺産として、何としてでも外交成果を1つあげたいのだ。しかし、チェイニー副大統領は、依然強大な力で6カ国協議を骨抜きにしようとしており、協議のさらなる進展を阻止するために韓国の新大統領とくみするもくろみでいるのだ。引き続き要注目である。新年おめでとう!
−ジョージ・パッカード
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