ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長
1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。
ワシントンリポート Feb. 2008
“スーパーチューズデー”では、ことし11月4日に、誰が民主党の大統領候補になるかの決着はつかなかった。しかし、もしかしたら、最後に大統領の座に着くのは誰なのかということについての方向性を示すことにはなったかもしれない。共和党のジョン・マケインである。
わたしが思うに、マケインはヒラリー・クリントンでもバラク・オバマでも打ち負かすことができるだろう。ただし次の条件が整えばということではあるが。
(1) イラク戦がこれ以上ひどい状況にならないこと
(2) 米国経済が厳しい不況に陥ったりしないこと
(3) 71歳という彼自身の健康状態がマイナスにならないこと
マケインは、ある意味で自らイラク戦の捕虜になったようなものだった。昨年夏の米軍増派を支持し、今ではブッシュと歩調を合わせて、これが有効だったと主張している。これもまた、11月までにアメリカ軍が完敗したりしないという前提での話だが、マケインはおそらく、あくまでもこの路線を押し通すだろう。一方で、オバマは米軍の早期撤退を呼びかけ、ヒラリーは世論の動向を見ながら、どちらに転んでもよいという立場を取るだろう。
兵役経験のないオバマも同様で、自らが最高指揮者にふさわしいとの国民に対するアピール力は弱い。もし彼が、イラクからの早期撤退にこだわるならば、その後始末について、また中東全体に対するアメリカのスタンスについて、これまで主張してきた内容よりもっと説得力を持った政策プランを用意する必要がある。1968年の“戦争を終結させる密かな計画”キャンペーンのあとでさえ、ニクソン大統領とヘンリー・キッシンジャー率いるアメリカがベトナムからの撤退を開始するまで、実に4年もかかったことを思い起こしたい。
もちろん、外交関連において、これから表面化しそうな問題は数多くある。パキスタン情勢はいまだ予断を許さず、いつ内戦が発生してもおかしくない勢いであり、そうなると、この国が持つ核兵器がどうなるのか先は見えない。アルカイダは、アメリカに対する新たなテロ攻撃に向けてさらに準備を強化しているともいわれている。しかし軍人として危機を乗り越えてきたマケインにとっては、惨事ですら有利に働くだろう。
昨年夏、世論調査会社によって見切りをつけられたあとのマケインの驚くべき復活は、次のような理由による。
(1) イラク増兵の成功
(2) 移民制度改革法案を後押しして、不法移民に市民権取得への道を開こうとしたことで、ヒスパニック系の間で支持を増やした
(3) 北ベトナムで捕虜として収監されていた時、クリスマスだからと彼のために敵が砂に十字架を書いてくれた話を披露して、サウス・カロライナの保守派クリスチャンの支持を勝ち取った
(4) 自らの率直なしゃべりと万人向け政治が最も受けるニューハンプシャーでの勝利に向けて的を絞った
ジュリアーニがフロリダで惜敗し、選挙戦から脱落したこともプラスに働いた。
マケインのブッシュの減税への反対やその他の背徳行為について、たとえばラッシュ・リンボーのような超狂信的保守系右派の怒りがいまだ収まらないのは事実だ。でも、だからって、彼らが11月にどうするというのだろう。家にこもって投票しないという手もあるかもしれないが、わたしは、彼らがクリントンやオバマの勝利に対する恐怖に駆り立てられて、涙をのんで、マケインに投票するに違いないと思うのだ。
マケインの選挙チームには、多くの伝統的主流派の共和党員が名を連ねている。今週版のニューズウィークの巻頭記事の中で、主要アドバイザーの1人であるチャーリー・ブラックは、マケインは常に、そしてこれからもロナルド・レーガンの伝統を引き継いだ保守派であると述べている。
ほかに著名な共和党員で彼に賛同しているのは、コリン・パウエル、ヘンリー・キッシンジャー、ジェイムズ・シュレシンジャー、ブレント・スコウクロフト、ロバート・キミット、そしてジョージ・シュルツなどである。マケインを良く知る人々の中には、彼がカッとなりやすいため、危機的状況における判断を任せるのは危険だと心配する声もある。しかしこういった全国的に名の知られた人々が、そういった心配を吹き飛ばすのに一役買うだろう。彼らは有権者に向けて、パパブッシュ時代の、慎重でバランス良い外交の復活を強調するに違いない。
日本関連では、リチャード・アーミテージとマイケル・グリーンという2人のベテラン政策アドバイザーがマケインチームに加わっている。賢明なアドバイスが期待できるだろう。
ミット・ロムニーとマイク・ハッカビーはそれぞれ選挙戦に残ると宣言しているが、3月の終わりまでには、おそらく両方とも脱落する。
もし、今回の分析が正しければ、マケインは残る2008年の多くを、来年1月の新政権発足に向けた有能な人選と政策作りに充てることができる。
その他の情勢については。響きと怒りばかりで、何ら意味があるわけではない。
−ジョージ・パッカード
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