最終更新: 2008/10/13 00:30

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

ワシントンリポート May. 2008

この4日の間に、アメリカ大統領選は予想もつかないドラマティックな展開を見せた。バラク・オバマ上院議員が最も恐れていた悪夢が現実のものとなったのだ。20年にわたって精神的助言を受けてきた教会の牧師で、結婚式や2人の娘の洗礼まで執り行ってくれた人物が、自分に向けて、公の場で想像もつかないような痛烈な言葉を浴びせかけたのだ。

先週までならば、ほとんどの有権者は、レベジェンド・ジェレマイア・ライトをただの「おかしなおじさん」として相手にもしなかったことだろう。しかし、ビル・モイヤーのテレビ番組とナショナル・プレスクラブに出演したことで、彼がふりまく憎しみのメッセージが真剣に受け止められることとなった。具体的にはこういった内容である。
  • エイズ危機は、少数民族の大量虐殺の目的でアメリカ政府によってつくりあげられた。

  • アメリカがテロを行っているのだから、2001年のアメリカへの9.11攻撃は正当化される。

  • みんなが“アメリカに幸あれ”ではなく、“アメリカなんかクソくらえ”と言うべきなのだ。
今の脚光を存分に楽しんでいるライトは、すぐには引き下がらないだろう。オバマは、アメリカの人種問題についての自らとライトの考え方の違いについて思慮深い分析を織り込んで、2月28日のフィラデルフィアでの演説を印象的なものにした。その中で、彼は昔、差別に苦しんだ上の世代のアフリカ系アメリカ人の怒りを理解することはできると述べている。しかし、ライトと完全に絶交することなどできないともつけ加えたのだった。

ライトにとって、これは侮辱の上塗りとなった。これより前、オバマは、イリノイ州スプリングフィールドで大統領選出馬表明を行ったその日に、ライトの援助を断っている。ライトは激高し、今、報復を行っているというわけだ。

きのう(4月29日)、オバマはさらに踏み込んで、ライトの言説を“ばかばかし”くて“分裂的で破壊的”であり、彼のキャンペーンを象徴するものではないと激しく非難した。これをものともしないライトは同日、オバマが20年来の彼らの厚い友情を裏切ったと発言している。

アフリカ系アメリカ人として、初めて合衆国の大統領になれる実際的なチャンスを得たオバマが、ここに来て、仲間のアフリカ系アメリカ人によって脱線させられるというのは何とも大きな皮肉である。ライトは、アフリカ系の真の向上のためというよりも、まるで自分自身の暴言やうわ言をまき散らすだけの自己満足に陥っているように見受けられる。

この騒動のせいで、5月6日に予備選を迎えるインディアナでのオバマの支持率はすでに下がりつつある。各メディアで右派のコメンテーターは問う。「ライトのあんなに支離滅裂で危険な発言を前にして、よくもオバマは静かに教会に座っていることができたもんだ」。

オバマがヒラリーから勝ち取ろうと狙っているまさにそのグループに属する人々、ブルーカラーや年配層、カトリック系の労働者階級の有権者たちが、オバマとライトとのつながりに憤慨するのではないかと予測される。こういった人々が、ライトの考えに一度でも共鳴したことのある黒人候補者に投票するなどということはちょっと考え難い。

これまで、民主党候補として共和党の保守派が恐れていたのは、ヒラリーよりもオバマだったとここで言っておきたい。彼らは、ヒラリーの“重荷”は、ビル・クリントンという「女好き」の知事の妻として過ごしたアーカンソー時代にさかのぼると確信し、これをネタに11月に彼女を撃沈させることができると考えているからだ。今彼らは、11月4日のマケイン・クリントン対決という見込みを前に、ほくほくしている。

民主党にとって、もう1つの心配の種は、ジョージ・ブッシュを説得してイラクを侵攻させたネオコンたちがマケインの周りをうろついており、そのキャンペーンが長引くにつれ、力を増していることである。ロバート・キーガン、ウィリアム・クリストル、そしてマックス・ブートといった連中が、そろってマケインの外交チームの中枢に入ってきている。先週マケインは、ロシアをG8から追い出すよう呼びかけを行い、アメリカは、イラク戦で“勝利”するためなら、彼の地に100年でもとどまるべきだと発言した。経済政策でも極端に右寄りとなり、今ではかつて反対していたブッシュの減税を支持するまでになっている。これらすべては、単なる保守派共和党員からの資金集めの方策なのかもしれないが、外交政策について確かな目を持つ専門家にとっては看過できないことである。

最後に、11月、ヒラリーが戦争ヒーローであるジョン・マケインを打ち破ることができると考える者など誰もいない。彼女の、ボスニアで銃撃に遭遇したという哀れなうそは、ベトナムでのマケインの真の英雄行為と見比べられることだろう。ゲームオーバーである。マケインが勝つ。

−ジョージ・パッカード

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