最終更新: 2008/08/20 12:20

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

ワシントンリポート Jun. 2008

今週5月26日付のワシントンポストに、これまで見たことのないほど、ユニークな見出しの尋常ならぬ記事が掲載された。「中堅官僚、アメリカの北朝鮮政策をかじ取り」と題して、12面にさりげなく載ったこの記事は、いかにしてクリストファー・ヒル国務次官補が単独で、残すところ7カ月となったブッシュ政権の北朝鮮 - 2002年にはイラク、イランと並ぶ悪の枢軸だった - 政策を、侮蔑から今のような核兵器問題での合意をはかる方向へと転換させたかという内容についての話だった。

この記事は、チェイニー副大統領とジョン・ボルトン(前)国連大使といった強硬派が北朝鮮政権を孤立、願わくば転覆させようとしたことで起こった内部確執を見てきたこちらの朝鮮問題専門家の間に大騒ぎを巻き起こした。クリス・ヒルの成功は、仮にそれが成功だとして、こちらの観測筋のほとんどを驚かせた。彼は極めて薄い氷の上を渡っており、いつカウンター・クーデターにさらされるかわからないと目されていたのだ。保守系の批評家は、彼をして“キム・ジョン・ヒル”と呼ぶほどである。

彼は、北朝鮮との交渉についての情報を、主にライス国務長官とブッシュ大統領といったごく限られたワシントン高官の間にとどめたことで成功した。プロの外交官として、30年のキャリアを持つヒルは、ポーランド大使だった時にブッシュの目に止まった。ブッシュのお気に入りであるポーランド大統領が、彼を大いに絶賛したのである。

ヒルの役割についてのあまりにも刺激的な記事は、ライスをして、5月29日にこれを否定する発表を余儀なくさせることとなった。いわく、ブッシュ政権の北朝鮮政策は、いくつもの機関とさまざまな人々によって、慎重に調整され進められているというものである。しかし、ほぼその直後、この声明は、マイク・チノイ著「メルトダウン」が新たに刊行されるとのニュースにたたきのめされることとなった。この本の中で、ライスは、北朝鮮との交渉についての報告を「わたしだけに持って来なさい」と言ったとされているからだ。

5月28日には、もう1つ劇的な展開が待っていた。マクラッチー新聞社のウォーレン・シュトローベルのリポートによれば、最近、北朝鮮側が差し出したとする1万8,882ページに及ぶ書類の“情報漏れ”がもとで、1992年の北朝鮮のプルトニウム生産量についてのCIAの見積もりが、間違い以外の何物でもないことがわかったというのだ。50kgとされていた北朝鮮の所有量は30kgでしかなく、その中から核実験に使われたのは、おそらく5kgだったということである。この2つの数字の食い違いについては、何らかの取り決めが連邦議会での承認のために通された際、しっかりと精査されることだろう。

一方、日本を批判する人々が再び力を盛り返してきている。日米関係は “ふらついて”おり、福田首相はどうしようもなく弱い。台風の犠牲者が飢えているというのに、日本は何トンもの米をためこんでおり、クジラを殺し続けることで依然世界の声に逆らっている。拉致問題に強迫的に固執するあまり、北朝鮮に関する6カ国協議を頓挫させようとしている、などという話題を議論するのがはやりとなっている。これらの批判は、フェアでこそないものの、最近の大規模な地震による被害のために、アメリカ人がより中国の人々に同情的になっている今、メディアや世論が再び反日本に傾いてきているのは明らかだ。

2009年1月に生まれる新政権は、賢明な政策選択によって、この流れを転回できるだろう。幸運なことに、3人の現候補者とその外交政策アドバイザーはすべて、日米関係について妥当な見識を持っている。

しかし、北朝鮮問題で何らかの合意を得るために、これからの3カ月は重要になってくる。ブッシュ大統領とライスは度重なる失敗を相殺する外交上の成果を欲してやまない。北朝鮮の核計画に関する合法で検証可能な合意にこぎつけるため、日本はしばらくの間、拉致問題を棚上げすることにしたほうが得策だろう。

今週、日本がイギリスと同様、クラスター爆弾禁止の新たな国際条約に同意したことでアメリカにたてついたというニュースは、ほとんど話題にのぼることはなかった。これは東京が下した健全な決断で、ワシントンの新政権から新たな敬意を勝ち得ることになるだろう。日本は往々にして、ジョージ・W・ブッシュの従順な “加担者”と見なされてきた。もし日本が、ドイツやフランスのように、2003年のブッシュのイラク侵攻に反対していたら、ひょっとして何か有益な結果が生まれていたかもしれない。未来への教訓である。

−ジョージ・パッカード

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