最終更新: 2008/12/05 20:15

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Inside America

アメリカ政治報告

(This report is also available in its original English version.)

ジョージ・パッカード氏

ジョージ・パッカード氏略歴
国際大学学長、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)教授、
アジア財団理事、日米財団会長

1956年駐留米軍少尉の時、初来日。東京大学社会科学研究所に留学。63〜65年ライシャワー駐日米大使の特別補佐官。79年からワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)学長を務める。94年4月新潟県南魚沼郡大和町の国際大学学長に就任。98年3月日米財団の会長に就任。米国を代表する知日派の1人。

ワシントンリポート Aug. 2008

石油会社の最大手「エクソン・モービル」が、2008年度第2四半期に117億ドル(注: 約1兆2,600億円)の純利益を上げたという見出しが、アメリカ中の新聞を飾った。企業が出したもうけとしては、国内史上最大のものである。国民のほぼすべてが、1ガロン = 4ドルを超えたガソリンの値段に、窮々としているタイミングで出たニュースであった。

ほとんどの日本のドライバーにとって、このガソリンの値段は異様なものとは思われないかもしれない。けれども自動車の発明以来、ずっと安価なガソリンと石油の値段を享受してきたアメリカの消費者にとっては、これは本当にショックな出来事なのだ。高い失業率や住宅差し押さえによって、多くの家族が住む家を失っている現状に加えて、いまや確実に迫りつつある景気後退を前に、バラク・オバマ上院議員にとって、これは確実に、今後11月4日までの経済政策の最重要課題となることだろう。

この問題に対して、マケインは答えを持っていないし、おそらく自身で、エクソン・モービルなどの石油会社から選挙献金を受けていることだろう。彼は、海洋掘削に前向きだが、これは、ガソリンの高値に対する何の解決にもならない。海底石油は、たとえあすから着手したとしても、あと10年は手に入らないし、米国の最も美しい海岸線を奪われることに環境保護主義者たちが強く反対することだろう。

オバマは、自然保護や代替エネルギー源へのもっと大規模な投資を呼びかけている。彼はまた、中東の石油に対するわれわれの依存度を減らすよう主張してもいる。

エクソン・モービルのニュースとほぼ連鎖する形で、今週、「ウォールストリート・ジャーナル」が、イラク侵攻の首謀者の1人であるリチャード・パールが、現在イラク北部での複数の石油探鉱、取引ベンチャーに投資していることを明らかにした。この驚きのニュースに反戦論者たちは激怒するに違いない。彼らは当初から、パールやポール・ウォルフォウィッツ、そしてその直属の部下であるダグラス・フェイスといった“ネオコン族”が

1) イスラエルを手助けする(3人はいずれもユダヤ人で、イスラエルの情報機関と密接な関係にある)
2) この地域の石油を確保する


という2つの理由のために、ブッシュをイラク侵攻に駆り立てたと主張してきたからである。しかしながら、これまで誰も、彼らを戦争で個人的な利益を得ようとしたと非難してはこなかった。それがここに来て、パールがまさにその石油に投資しているというのである。オバマは、この事実を大きな問題にすべきだし、またそうすることだろう。

オバマにとって、より重要な問題は、外交と安全保障政策の分野に横たわっている。ベトナム戦争以来、共和党は、安全保障問題において民主党よりも信頼できるとみなされてきた。リンドン・ジョンソンもジミー・カーターも、そしてビル・クリントンも、みな外国の脅威の前に頼りない姿をさらすことを余儀なくされたのである。ジョージ・W・ブッシュは、ベトナムにおいて、兵役逃れをしていたにもかかわらず、2000年にはどういうわけかベトナムでの兵役を全うしているアル・ゴアよりも力強いイメージを打ち出すことに成功したし、2004年にはどういうわけか、真のベトナム戦争の英雄であるジョン・ケリーを頼りなく弱々しく見せることができたのだった。

サマンサ・パワーが「ニューヨーク・レビュー(オブ・ブックス)」最新号(2008年8月14日号)に寄せた独創的な記事によれば、これらすべてが今変化しつつある。パワーは、ことし(2008年)初めにヒラリー・クリントンを“怪物”と呼んで、くびになるまで、オバマの外交政策アドバイザーの中心的存在だったのだが、彼女の指摘は、わたしが今後、オバマのキャンペーンのテーマとなるだろうと予測するものを見事に暗示している。

  • ブッシュの失敗によって、今日のアメリカは以前より安全でなくなっている
  • アメリカは、友好関係にない独裁者とも協議できるし、またそうすべきである
  • イラク、イラン(原文ママ。おそらくアフガニスタンの間違いか?)を相手に勝ち目のない戦いを始めたことで、米軍の他地域での活動に支障が出ている
  • イラクからの撤退は、米軍の安全や地域の安定を犠牲にしなくても達成できる
  • 退役軍人たちへの待遇は、ブッシュ政権がこれまで施してきたものと比べて改善されるべきだ
  • アメリカの安全保障のために国際的な法や組織、条約を順守すること。連携以外の選択はない


以前ならこういった考えは、権力の使い方というものについて、実質的な理解を欠いたどっちつかずのリベラルのたわ言として却下されたかもしれない。しかし現実として、アメリカ経済が深刻な不況を迎え、イラクとアフガニスタンでの2つの戦争が悪化の一途をたどっている状態において、アメリカの選挙民は、ルーズベルトやトルーマン、ケネディやさらに言えばアイゼンハワー(彼の孫娘はオバマ陣営で仕事をしている!)のようなリベラル的やり方をただもう試してみようという気になっているかもしれないのだ。マケインがベトナムの英雄であることは事実だ。けれども彼の政策観は、時の経過とともに色あせてきている。過半数の有権者がこれを真に受けるかどうか? 続きは請うご期待だ。

−ジョージ・パッカード

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