最終更新: 2008/12/05 19:14

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帰ってきた矢部ちゃんのカメラマン日誌

カメラマンのつぶやき

今回のカメラマン日誌は、浅野カメラマンの潜水艦同乗取材記です。
日ごろは撮影部のデスクも兼任する、いわば「プレイングマネージャー」のベテランカメラマンも、潜水艦艦内の撮影という滅多にない取材であるうえ、「えひめ丸」と「グリーンビル」の衝突事故の直後ということもあり、さすがに少々緊張 &興奮気味です(お昼ご飯として出してもらったおいしいカレーライスもおかわりしそこなってしまったとか…)。

2001年3月28日 海上自衛隊潜水艦「はましお」同乗記

 2001年2月21日、横須賀市の米軍基地内にある海上自衛隊潜水艦埠頭(ふとう)で私はついに潜水艦に足を踏み入れた。カメラマン人生20年近くになるが、潜行する潜水艦に同乗して撮影するのは初めてである。

 この潜水艦内公開は、1月の時点ですでに決まっていたもので、別段、練習船「えひめ丸」と米原潜「グリ−ンビル」の衝突事故があったからではない。だが、設定された撮影日時があまりにもタイムリ−であったため、潜水艦内の様子を知るための貴重な映像取材として、この取材は仲間内でもにわかに注目を集めていた。しかも、実際の艦内の様子について、私は短い資料映像などでわずかに見たことがあるだけ。いざ乗り込むにあたり、思わず気持ちが高ぶるのを感じる。

 国産23隻目の潜水艦「はましお」。全長およそ76メートル、直径およそ10メートル、基準排水量2,200トン。潜行能力などは機密事項で明らかにはされなかったが、竣工(しゅんこう)から16年たった現在でも日本の主力潜水艦である。

 定員75名のこの潜水艦に乗員のほかに今回は報道陣14名が乗り込む。これだけ多くの人間が入れば、艦内はさぞかし狭く、人であふれんばかりかと思いきや、出入口のハッチからはしごを使って中に入ってみると、案外そうでもない。確かに通路は広くはないが、食堂などは思った以上に広いな…、というのが私の第1印象だった。ただ、今回の私の任務は、あくまで代表取材カメラマンとして、テレビ局各社の記者とともに「はましお」艦内を撮影すること。興味本位で見入る余裕はあまりなかったというのが現実である。

 午前8時、「はましお」は埠頭を離れる。艦上で隊員がほかの隊にラッパであいさつ。  東京湾内は潜行できず、他の船と同様海上に浮いたままの航行である。その様子をしばらく艦上から撮影する。海に落ちないように命綱を使い、万が一、海に落ちた時に備え、ライフジャケットを着用しての取材だ。

 今回の「えひめ丸」と「グリ−ンビル」の衝突事故直後であったため、取材陣の興味はおのずと発令所の機器に集中する。だが機密事項との兼ね合いもあり、潜望鏡の動き、レ−ダ−画面、潜行浮上時の機器操作遠景など、撮影時の気遣いはかなりのものだった。

 この潜水艦同乗体験のメーンは、海上から海中への潜行と、逆に海中から海上への浮上、通称「ドルフィン」と呼ばれる航法である。江ノ島の南、三浦半島城ケ島の西20kmの相模湾で行われた今回の「ドルフィン」体験は、角度20度弱。艦内で足を踏ん張り、手すりなどに軽くつかまれば耐えられる程度のものだ。最近テレビでよく見た米原潜「グリ−ンビル」の映像では、海上に勢い良く舳先(へさき)が飛び出していたが、あれほど強烈なものではない。だがそれでも、潜水艦艦内にいて潜水艦に乗っているという実感が最もあるのは、まさにこの瞬間である。
 そしてまた、カメラマンとして最も苦労したのもこの瞬間だった。
<今まさに潜行中!>
<浮上中!>
 …というのを映像で表現しなくてはいけないのだが、何しろ場所は窓もなく、何一つ外の様子が見えない潜水艦の中。撮れるのは隊員たちの踏ん張る姿だけなのだ。  ちなみに当然のことながら、「はましお」の乗員達はソナ−、潜望鏡などを使って、海上の安全を確かめてから浮上したのはいうまでもない。

 潜水艦の乗り心地は意外と快適。海上では一般の船と同様に揺れるのだが、いったん潜ってしまえば揺れはあまり感じなくなる。また、海中では、動力をディ−ゼルエンジンからバッテリ−駆動に切り替えるため、エンジンの騒音も気にならない。ちなみに今回は深度100メートル近くまで潜ったらしいのだが、そんなに深い海の中に今自分がいるという実感はほとんどなかった。

 このほかに案内していただいた艦内の様子で特に印象に残ったのは、隊員たちのベッドだ。長さだけは180cm弱あるものの、何と幅60cm、高さ50cm。しかもこれが3段になっている。ここに隊員たちは潜り込むようにして仮眠をとるとのこと。艦内のスペ−スが限られているため、仕方がないといえば仕方がないのだが、これではプライバシ−などあったものではない。また別の睡眠スペ−スは、驚くなかれ、発射室内の魚雷と魚雷の間だった。こんな名ばかりのベットで仮眠をとるなんて、気分のいいものではないだろう。

取材撮影部 浅野 武彦

 朝8時に出港したわが乗船艦も17時前には無事に帰港。
 一般的に乗ることのできないものに乗ることができたという意味では、自分の体験的取材資料の引き出しがまた1段増えたことに、私は素直に充実感を覚えていた。だが同時に、潜水艦に実際に乗ってみるという体験を通じて、今回の「えひめ丸」に起こった出来事の重大さを私はあらためてわが身に引きつけて考えずにはいられなかった。

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