最終更新: 2008/12/05 19:14

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帰ってきた矢部ちゃんのカメラマン日誌

カメラマンのつぶやき

 今回のカメラマン日記はちょっと趣向を変えて、フジテレビ取材撮影部付アルバイトの橋本嬢によるカメラマンアルバイト日記です。
もともとは、現場に出ているカメラマンだけではなく全体を指揮しているデスクの仕事がどういうものなのかをみなさんにご紹介できないかと思い主に撮影デスク補佐の仕事をしている現役女子大生アルバイトの彼女にお願いしてみたのですが、でき上がった文章を見てみると、そこには、業界人ではない一般の人の視点から見たニュースの前線の姿が描き出されていたのです…。

2002年7月1日 フジテレビ新人アナウンサー研修日誌

 6月8日金曜日、その日のフジテレビ報道センターはいつもとまるで様子が違っていました。
 一歩踏み込んだだけですぐに感じるほどの緊張感で空気が張りつめて、混乱きわまった何か殺伐とした雰囲気です。
 時間は、私のバイト始業時刻である15時少し前(ちなみに24時間人が動いている報道センターでは、時刻は24時間制です)。普段ならまだのんびりとした雰囲気が漂っている時間帯なのですが…。
「何かあったんですか?」壁一面に設置された無数のテレビモニター画面を横目で確認しながら、VE・照明デスクの良和さんに尋ねました。
「そっか、学校行ってたから知らないんだ、大変だったんだよ、大阪で男が小学校に侵入して包丁で…」刃物を振るうフリをしながら答える良和さんも、どこか落ち着かない様子です。
「・・・?」まだ私には事態をすぐには想像できませんでした。そう、その日、大阪府の池田小学校で児童8人が刺殺されたあの事件が起きていたのです。

水中カメラ

大阪児童殺傷事件

 16時から事件について緊急特番が始まりました。大阪からの生放送です。
 この時間、普段ならスーパーニュースのキャスターを務めるべく報道センター内で準備しているはずの安藤優子キャスターが神妙な面持ちで現地からリポートしています。
机上のパソコン画面を見ると、カメラクルーもすでに2班現地入りしているらしいし…。
彼らのフットワークの軽さに驚くと同時に、事件の大きさをあらためて実感しました。

 事件発生からある程度時間がたっていたこともあり、特番は新しい情報を加えていくというよりは、その発生時の状況を繰り返し報じるといったスタイルになっていました。それでも、画面には、ロープを張りめぐらされた校門を出入りする父兄の姿やたくさんの報道陣が見えて、現場の混乱とその痛ましさを現実のものとして受け止めるには十分でした。こんな風にいくつもの番組を削って、いわば号外的な報道番組が組まれるのに居合わせたのは、私がこのバイトを始めて1年半余りで初めてのこと。ついつい緊張してしまいます。

 私たち取材撮影部のアルバイトの仕事は主に、撮影デスクが翌日のカメラ取材態勢を作るのをお手伝いすることです。ところがきょうのような大事件が発生すると、報道センター中のだれもが目の前の取材と放送のことに集中してしまい、あすの取材態勢の話など二の次になってしまいがち。というわけで、周りの緊迫した雰囲気に反して、私には何もすることがないという状況になってしまいました。これが結構居づらいのです…。  ただ座ってテレビを見つめるだけの私の周りをオンエアの迫ったスーパーニュースのために内勤記者や番組スタッフたちが忙しそうに、本当に文字通り「走り回って」います。
「現在死者*人、負傷者#人!!」新しい情報が入ると、社会部や連絡部のデスクが報道センター中に聞こえるように声を張り上げ、そのたびに「えっ、*人?!」その確認をとるために至る方向から聞こえてくる声、声、声…。
1つの声に連なるその数倍もの声が辺りをたちまち怒号のあらしに巻き込みます。そして情報差し替えのためにさらにかけまわる担当者たちの足音。それが何度となく繰りかえされ、そのたびに死傷者の数は増えていく…。

 こんな風に何か大きな事件が起きるごとに報道センターの空気は白熱化し、それを肌に感じながら私はある種の違和感、居心地の悪さを覚えずにはいられません。
(どうして私がここにいるの?)
(私に何ができる?)
 事件の当事者でもなく、またそれを伝えるための作業にも直接かかわってもいませんが、それでも他人事と割り切っているわけでもありません。しかしそんな私も結局は情報を受け取るだけのただの一視聴者にすぎないんだということをこの場に身を置くことで毎回より強く実感させられるのです。

水中カメラ

もう1人のアルバイト
今村貴子さんと

その日のデスク浅野さん(先日カメラマン日記で、潜水艦同乗日記を書いていた人。浅野さんは現場カメラマンとデスク=<全体を指揮する人>
とを兼任しているのです)も、いつもなら私の雑談につきあってくれるのですが、この日は電話にかかりっきり。
大阪の事件だから東京でのカメラ取材がそれほど多くなるわけではないのに…、と思って、電話の内容に耳を傾けてみると、どうやら、こんな日は、メーンのニュースになる取材についての連絡事項がおろそかになりがちなので、同時進行している別の取材に不備がないよう気を配っているようでした。

 撮影デスクは、全体の統制をトータルに図る司令塔のようなもの。すべての現場にいるカメラマンの状態を把握し、取材条件や、時には各カメラマンの体調まで考慮に入れつつ、適材適所のさい配をふるうことが望まれます。本当に気骨が折れる仕事だなあ、と隣で見ていて何時も思います。

 結局、この日のスーパーニュースはほぼこの事件一色で放送されました。怒とうのごとく過ぎ去ったあっという間の2時間…。しかし放送終了後は、休む間もなく、夜のニュースジャパンに向けて会議が始まっていました。

水中カメラ

取材撮影部
デスクアシスタント
橋本 尚子

 バイトを始める前に自宅でテレビを見ていた時には決して意識することはなかったけれど、ここにいると、ニュースって本当にたくさんの人の思いと労力の集結してできたものなんだなあと感じずにはいられません。そして、世の動向に瞬時に、しかも最も密に影響を受ける報道の世界だからこそ、そこに身を置く人たちの平和を願う気持ちはより切実なんだろうなと思います。 

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