死者は6万9,000人を超え、負傷者は37万人以上にのぼっている中国・四川大地震。発生から1カ月経過した現況を取材するため、再び被災地入りした。 最初に訪れたのは、手抜き工事が問題になっている都江堰の中学校倒壊現場。この中学校では、生徒や教師ら200人以上が亡くなったが、倒壊現場からは、手抜き工事の痕跡が見つかっており、遺族は、建設業者に対して責任追及を行っている。しかし、中学校の周辺道路には警察が配置され、メディア規制も敷かれていたため、取材許可がまったく下りない。中国政府がメディアに対して、かなり神経をとがらせていることがうかがえた。 街中のいたる所では、仮設住宅の建設や水道管の修復工事が急ピッチで行われていたが、重機の手配もままならず、水道菅のような重量のあるパイプですら、人の手による運搬。そのうえ、作業者の数も少ない。倒壊した家は、放置されたままの所が多く、仮設住宅や路上のテントで避難生活を余儀なくされる被災者には、生活のめどがまったく立っていない。新築中の家が震災にやられ、建て直しを余儀なくされた住民は、「被災者の声が政府にしっかり届くよう、取材してください」とわれわれに訴えてきた。現在の状況は、政府の手が隅々にまで及びきっておらず、復興にはまだ時間がかかりそうだ。 一方、北川の唐家山にできた土砂崩れダムは満水状になり、決壊の恐れがあったため、下流地域の綿陽市住民には、避難命令が出されていた。中国政府の災害対策本部は、決壊を防止するための排水路などつくって自然放水を試みていたが、計算通りには事が進まず、ダムへの水圧はさらに増加。そのため、道路のいたる所に警察官が立ち、車や人の侵入を一切禁止したため、街は完全なゴーストタウン。各電柱の170cmほどの高さには、赤いテープが張られており、それは、ダムが3分の1決壊した場合に達するであろう水位を住民に知らせ、警告を促すものであった(右・写真の電柱)。これだけでも、ダムの決壊は、大惨事になることがうかがえる。河川沿いには、不安げに水位を確認に来る人々であふれかえっていたが、ダム放水のニュースがあるたびに、河川の水位は確実に上昇していて恐怖すら感じた。 避難場所になっている高台の公園も行ってみた。そこには、避難住民が設置したテントであふれかえっていた。たき火での自炊生活、洗濯をしている人々、放心状態で、テントに寝転がっている人々。医療チームに体調不良を訴える人。衛星アンテナを組んで、テレビで土砂崩れダムのニュースにくぎ付けとなっている人々。このような過酷な環境下にもかかわらず、受験勉強に励む学生までいた。その隣のテントの避難住民は、「夜、電気がなく、何も見えない状況でも、彼女は恥ずかしがることなく、英語を声に出して勉強しているよ」と語った。自分の目標を見失わずに頑張っている彼女の姿には深く感動し、心の底からエールを送った。 取材を始めて3日後、ダム決壊の恐れはなくなった。大多数の避難住民はそれぞれの家に帰っていったが、「早く帰りたいけど、家は(崩壊しかけていて)危険な状態だから帰れません。」と語り、テント生活を余儀なくされる人もいた。震災から1カ月。被災者には、家の修復や失業問題など、多くの課題がいまだ残されている。被災地の復興が進み、人々の生活が1日も早く普段通りに戻ることを願ってやまない。