“えっ! これがオーストラリアの首都!?”と思いたくなるぐらいにキャンベラの街には何もない。この街は、人工的に設計されたということもあって、バーリー・グリフィン湖を中心に、国会議事堂、最高裁判所、戦争記念館などの大きな建物だけは整然と建ち並んでいるが、あとは新緑豊かな自然が広がっているだけで、のんびりした時間が流れている。
今回、キャンベラでは、オーストラリアの軍事基地で予定されているカンガルーの間引き計画について取材を行った。施設前では、動物愛護団体の人々が泊まり込みでデモ。間引きが撤回されるまで立ち退く気はないと語っていた。
街頭でも一般市民の方々にカンガルーの間引きについて、インタビューを行ってみた。意外なことに、かわいそうだという意見がほとんどなく、むしろ、カンガルーの被害に悩まされるとの声が多い。カンガルーは、害獣だとまで言いきる人もいて、草原地帯を愛くるしく跳ね回っているイメージとは程遠い意見ばかりだった。
また路上で、車にはねられたカンガルーの死体を目撃することもあったが、夜間、ヘッドライトを目がけて飛び込んでくることが多いらしく、重大事故にもつながるケースが多いそうだ。
この日、われわれは、カンガルーの被害に、10年間悩まされてきたワイナリーも訪れた。オーナーによると、例年、50〜60匹ぐらいのカンガルーが、ブドウ畑の下に寝そべっていて、鳥の侵入防止ネットに穴を開けられてしまうと、鳥にまでブドウを食い荒らされてしまい、被害は最悪だったそうだ。昨年 (2007年)の干ばつ期も、スプリンクラーを稼働させて、何とか干ばつから危機を乗り切ったにもかかわらず、収穫の直前に最高級のブドウを狙われ、苦労が水の泡になったと嘆く。
オーストラリアでは、銃や毒を使ってカンガルーの間引きを行うワイナリーが多い中、こちらでは、昨年11月に9.5haの広大な敷地に柵を設置。これによって、カンガルーの侵入を防ぐことには成功したが、3匹のカンガルーだけがブドウ畑に残ってしまい、何度も追い出すことを試みたが、逃げ足が速く、いまだに解決できていない。
しかし、今回、取材に訪れた時は、収穫期を無事に迎え、作業は順調に行っていた。1粒のブドウを食べさせてもらったが、普段、食卓で食べ慣れている甘い味と全く変わらない。ワイン用のブドウは渋いものだと思っていたので驚きだった。このブドウがワインとして、どのような味になるのか試飲できなかったのが残念である。
柵の外には、ブドウ畑に侵入できずにうろついている数十頭のカンガルーが見られた。間引きを日常的に行うワイナリーが多い中、オーナーは、カンガルーと共存して生きていくことがベストと語った。これだけの被害に遭いながらも、オーナーの心優しい人柄がとても、ほほえましく思える取材だった。