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花麺(めん)
敷田信之
各国に取材に出かけると必ず、わたしたちは行った国々で、その土地に根ざした食べ物を探し求めます。それを食べると、その土地の文化が体感できるような気がするからです。そうした食べ物が売られているのは屋台。これに限ります。ディープなほどたまりません! ここでは、そんな「屋台景色」をお伝えします。
■バリの海鮮
神々が棲(す)むといわれるバリ島。屋台にも神は宿っていた! 地元の人たちが舌鼓を打つ絶品の海浜屋台を紹介する。
州都デンパサールの中心部から程近いジンバラン・ベイ。
海岸沿いには、観光客用の新しい屋台が軒を並べる。無数の客引きが足を止めさせようとするが、それらには一瞥(べつ)もくれず、フォーシーズンズホテルに向かうビーチ・ロードを進む。伝統楽器ガムランの練習をしている集会所を右手に見ながら、車でしばらく走ると、先の方にくたびれたネオンの明かりが揺らいでいる。目指す屋台は、この一角にある。
「BAMBOO」は10軒近く並ぶ同じような屋台の最奥にひっそりとたたずむ。
この店の位置が味を左右する決め手となるのだ。
実は、ここの屋台群は漁港に隣接していて、最も水揚げ場に近いのが、この屋台なのだ。店主は漁を終えて帰港したばかりの漁師と直接交渉し、自ら目利きをして、その日とれた最もよい海の幸を安く仕入れる。これらは即、水槽に入れられ、客は生のままで食材を選び、調理法を告げる。
狭い店内を抜けると、そこはもう海。海岸一面にテーブルが並んでいる。夜になって、若干クールダウンした浜風を全身に受けながら、キリッと冷えたビールで料理を待つ。この日選んだのはバラクーダの塩焼き、ロブスターの炭火焼き、マテガイのホイル焼きなど5品。新鮮な食材に適度な味付け、熱々の料理をほお張りながら空を見上げると、なんと星々の近いことか。思わず緩んだ顔を神様に見られたような気がした。
■花麺(めん)
第1回目の今回は、プノンペン編です。カンボジアの首都プノンペン、「プノン」とは クメール語で「丘」とか「山」という意味だそうです。その名が示す通り、プノンペンの中心には、小山があります。頂上にあるお寺が「ワット・ペン」。ずばり「ペン寺」です。
言い伝えによると、13世紀ごろ、ペン夫人という高貴な女性が川で流されてきた仏像を見つけ、小山の上に祀(まつ)ったのが寺の起こりだと言われています。
そんなプノンペンの中央市場は、活気に満ちています。日常使いの「クロマー」といわれる手ぬぐいのようなものから、昆虫の唐揚げまで、実に多彩なものが売られています。買い物に疲れた地元の人が立ち寄るのが市場の一角にある屋台です。ここでは、1アメリカドルも出せばもう満足。動けなくなります。
そんな屋台で変わった食べ物を見つけました。その食べ物の名は「ヌムバンチョプ」、「花麺(めん)」です。これは、ココナッツミルクたっぷりのスープに麺を入れ、その上に季節の野菜や花々を散りばめたものです。生成り(きなり)色のキャンバスにはじけるような原色の花が彩られるさまは食べるのがもったいなくなります。
しかし、実際に食べてみると不思議な食感です。少々、辛味がある野菜と甘酸っぱい花弁の味が相まって絶妙な味が...、と言いたいところですが、実のところ、あまり美味ではありません。トッピングがない状態で食べた方がはるかにうまいと思います。生々しすぎるというか、植物のエグ味が強く感じられました。しかし、満足そうな笑みを浮かべながら食べる地元の人たちを見ていると、ついこちらもひきつけられ、食が進んでしまいました。
この「花麺」、季節によって、食材として使われる花の種類が異なります。朝食やおやつ代わりに、この「花麺」を食べるカンボジアの人にとって、この食べ物は季節の移ろいを感じさせてくれるとともに、忙しい日常も忘れさせてくれる一服の清涼剤なのかも知れませんね。
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