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敷田信之
 
各国に取材に出かけると必ず、わたしたちは行った国々で、その土地に根ざした食べ物を探し求めます。それを食べると、その土地の文化が体感できるような気がするからです。そうした食べ物が売られているのは屋台。これに限ります。ディープなほどたまりません! ここでは、そんな「屋台景色」をお伝えします。
 
■マレーシアの健康鍋  WindowsMediaPlayer[high][low]
立春を越えたというのに寒い日が続く日本。一方のここマレーシアは雨期が終わり、1年で最も気候が良い時期を迎えている。寒い時期には「鍋」というのが定番だが、連日気温30度を超す日が続くこの地でも鍋料理は盛んだ。今回は、数ある当地の鍋料理の中から最も健康的な一品を紹介する。
その鍋を食す場所は、首都クアラルンプールから北へおよそ1時間車を走らせた所にある町「イポー」。ここはもともと、中華系の人が多く住む土地で、「スチームボート」と呼ばれる鍋料理に人気がある。普通、この鍋の具には、たっぷりの海の幸や野菜などが使われるのだが、あるイポーの料理店では、この具に特別なものを用いている。
特別なものとは「トンカット・アリ」と呼ばれるマレーシア原産のハーブで別名「密林のダイヤモンド」。なぜこの呼び名が付いたかといえば、このハーブ、血行障害を改善する効果があるほか、なんと精力増強の効果も得られるからだ。
このハーブ、元々薬用として使われていたが、味が苦いため、料理には向いていないとされていた。しかし、店主が10種類以上のハーブを調合するなど、工夫をこらして、苦味が気にならないようにして鍋に加え商品化したところ人気を呼び、連日大盛況となっている。店主は将来、日本へも進出すると鼻息が荒いが、意外にその時期は早いかもしれない。



■秘薬の森・媚薬(びやく)の森
「海のダイヤモンド」、「黒いダイヤモンド」など、「〜ダイヤモンド」というものが、ちまたにあふれているが、ここマレーシアには「密林のダイヤモンド」なるものがある。このダイヤ、「トンカット・アリ」というジャングルに自生するハーブの一種なのだが、これが殿方の間でなかなかに人気がある。というのもこのハーブ、「回春」の効果があるというのだ。

世界最大級といわれるマレーシアの熱帯雨林にはこの「トンカット・アリ」のほかにも、産後の女性の身体を正常化させる「カティップ・ファティマ」や強力なせき止め効果があるといわれる「スス・ハリマオ(=トラの乳)」など、副作用のおそれが少ない伝統薬に使われるハーブが多く自生している。欧米の製薬会社は、まだ発見されていない有効なハーブを求めて、原住民を雇い密林に分け入り、サンプルを採取している。

このように未知の秘薬を内包するマレーシアの密林だが、近年、急速に減少している。違法伐採、ダム開発、宅地造成と、その原因は枚挙にいとまがないが、深い緑の中で広がっていく表面が乾いた赤土を見るたび、森が血を流し、悲鳴を上げているような気がしてならない。

森林保護を訴えるのは簡単である。しかし、どうすれば保護できるかといった具体的で効果的な方策を練るのは容易ではない。たいていは規制を設けたり、植林を行うといったことが提案されるが、これらの方法で、太古から守られてきた熱帯林が次世代に残せるかといえば、十分ではない気がする。

先日、マレーシアの森林学者と話をする機会があったが、彼が主張する森林保護案もありきたりのもので、失望感が込み上がってくるのを禁じ得なかった。「学際交流」という言葉があるが、森林保護についても、専門分野ごとの垣根を外して、自由に意見をするのも良いのではなかろうか。たとえば、森林学者、脳科学の専門家、それに製薬会社のスペシャリストが集い、原生林からしか抽出されない物質を探し出し、究極のリラックス効果を得られる健康食品として販売する。そして、その利益の一部を森林保護の費用として還元するといった案はどうだろうか。すべての関係者が幸せになれると思うのだが。