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「グアムル」のはなし
ドリアン王国
■「グアムル」のはなし
皆さんはこれまでに圧倒的な存在というものに出会ったことはありますか?
もしないのでしたら、お薦めがあります。それは「グアムル」です。「グアムル」は食べ物ではありません。また生き物でもありません。地球が何万年もかけて生み出した自然の造形、それが「グアムル」なのです。
「グア」とはマレー語で「洞くつ」という意味で、「グアムル」とは「ムル洞くつ」ということになります。この「ムル洞くつ」はいくつかの洞くつから成る巨大洞くつ群で、全体の4割しか調査が終わっておらず、残りは今も前人未到のままです。
2000年にマレーシア初の世界遺産に登録された「グアムル」は、現在、調査済みのいくつかの洞くつが公開されています。代表的な「ディア・ケイブ」は高さ40メートル、奥行き250メートルという世界最大の洞くつ空間を持っていて、1歩、中に入ると大きさに対する感覚が狂ってきます。例えると、映画「ミクロの決死圏」のようなもので、何かとてつもなく巨大な生物の体内を探検しているような気になってきます。また、この洞くつでは、ある歴史上の有名な人物に会うことができます。もちろん、本人ではなく、よく似た巨石なのですが。だれに会えるかですって? それは内緒です。ただ、実際に見るとなるほどと思ってしまいます。
「グアムル」見学は洞くつ内だけではなく、もう1つお楽しみがあります。それは「コウモリの出陣」見学です。「ディア・ケーブ」の中には、約300万匹といわれるコウモリが住んでいて、夕方になると、これらが一斉にエサを求めて洞くつから飛び立っていくのです。その飛び立ち方は、散り散りで出て行くのではなく、整然と一列縦隊で飛んでいくのです。その様はまさに出陣、大量のコウモリが奏でる羽音とも相まって、思わず最後の1匹が視界から消えて行くまで見てしまいます。
この稀有(けう)壮大な「グアムル」、たどり着くのは決して容易ではありません。行き方はマレーシアの玄関口、KLIA = クアラルンプール国際空港から東マレーシアの主要都市ミリまで飛び、そこから小型機に乗り換えてムルへ、さらに密林遊歩道を1時間余り自力で歩かなければ目的地に着きません。ただ、苦心して到達したときの感動はひとしおです。人生観を変えてみたいと思われる方は、ぜひ「グアムル」観光に挑戦してみて下さい。


■ドリアン王国
マレーシアの今を切り取る「マレーシアトピックス」。
第1回目は「ドリアン」についての雑学です。
マレーシアを7月ごろに旅行すると、クアラルンプールに限らず、各地でドリアンをてんこ盛りにした屋台を見かけることと思います。値段を聞いてみると「安いっ!」。田舎の方ではだいたい1個あたり4リンギット(日本円にして約170円)ぐらいで売られています。このドリアン、語源はマレー語で「棘(とげ)」を意味する「duri」から来ています。この「duri」に接尾語の「an」がひっついて「durian」(ドゥリアン)となります。ちなみに同じような成り立ちの果物に「lambutan」(ランブータン)もあります。こちらは髪の毛を表す「lambut」に「an」が付いたものです。意外に知られていませんが...。

このドリアン、マレーシアが原産とあって、この国には168種類ものドリアンが登録されています。その昔、王様への貢献品としてドリアンを差し出していたころは、もちろんきちんとした名前もなく、「象の頭」とか「黄金の石」とか、さまざまな呼び方がされていたそうですが、今はアルファベットと数字で区別されています。「マレーシア農林試験場」によりますと、このうち最もうまいとされている究極の品種は「MDUR88」と呼ばれる品種です。この品種、食感はあくまでもクリーミーで、しかも独特の香りも若干マイルドで、実の形も整った優れものです。肝心の味の方はこれまた申し分なく、掛け値なしに「うまいっ!」の一言に尽きます。ただ、苦めの味が大好きな中国人からはあまり受け入れられていないようで、彼らは苦めの味のヒット作「D24」の方を好むようです。しかし、「カンポン」と呼ばれる田舎で採れる昔ながらの野生種の人気も相変わらずあります。こちらの方の味は、荒々しさの中に素朴な味わいがあり、ジャングルに自生していたドリアン本来の味を楽しむことができます。

昔のマレー系の人たちにとって、「ドリアン」の木は特別なものだったようです。子どもが生まれるとドリアンの種をまき、子どもの成長とともに木も大きく育つといった具合に、ドリアンの木は親から子、子から孫へと伝わっていく自分たちの存在そのものだったのです。ただ、最近は新種に植え替えるために伐採したり、子どもたちが都会に出てしまい過疎化し、木々を守る者がいなくなったりと、30メートルを超す巨木は徐々に姿を消す傾向にあります。この国自体が急速に発展したのにともなって、マレー系の人たちの生活に根差してきたドリアンも時代とともに様変わりしています。まさにドリアンはマレーシアの国の姿を映し出している果物なのです。