解説委員の眼

能勢 伸之

フジテレビ解説委員
能勢 伸之のせ のぶゆき

ロンドン支局長、政治部デスクなどを歴任。

「オープンスカイ条約」による相互査察

2014/09/15

 中東の過激派組織「イスラム国」に世界の目が集まっています。アメリカ人、イギリス人の処刑の模様がインターネット上で流され、アメリカは、「イスラム国」への空からの攻撃の拡大に踏み切ることを明らかにしました。今月(9月)9日からのスーザン・ライス米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の中国訪問の目的の1つは、アメリカが目指す「イスラム国」掃討のための有志連合に中国の支持を求めることだったともされています。ただ、この訪問の際、ライス補佐官が会談した范長龍・中央軍事委員会副主席は、アメリカ海軍および航空機による中国近辺での偵察活動を削減、究極的には停止するよう求めました。これは、先月19日、中国海軍の潜水艦基地がある海南島の東の公海上を飛行中だったアメリカ海軍のP-8A哨戒機に、中国軍のJ-11B戦闘機が距離9メートルまで異常接近したことをアメリカ側が非難したことに関連して出てきた中国側の考え方です。

 注視すべき相手の動きを、衛星や偵察機、艦艇で探る。これは、安全保障上、重要なことです。そして、探られる側も、自分たちの動きが相手にいらぬ誤解を招く要因とならないよう、条件つきで相手に見てもらう。このために、アメリカ・ロシア・ヨーロッパ各国は、空から相互に査察するための「オープンスカイ条約(1992年)」を結んでいて、2014年現在の加盟国は34カ国にのぼります。

 ことし(2014年)2月に始まったクリミア半島へのロシア介入、そして、3月18日、ロシアのプーチン大統領は、クリミア半島のロシア編入を宣言。さらに、ウクライナ東部での親ロシア派とウクライナ政府の戦闘、マレーシア航空機撃墜事件等、ウクライナ問題が、米欧とロシアの対立事案として急浮上したのです。

 こうした中、3月17日から21日にかけて、米・独の査察チームが「オープンスカイ条約」に基づいて、サーブ340型機で、またフランスの査察チームが、ハンガリー所有のAn-26型機で、ロシアとベラルーシを空から査察。逆に、ロシアの査察チームも、6月1日から7日にかけ、NATO(北大西洋条約機構)に加盟したバルト沿岸のラトビアとリトアニアをAn-30B型機で査察。6月30日から7月4日にかけては、アメリカ軍の査察専用機「OC-135Bオープンスカイ」が、ロシアとベラルーシを空中査察。7月14日から18日には、米・トルコの合同査察チームが、CN-235型機でロシアの空中査察を実施。8月11日から15日にかけては、ロシアのAn-30Bが、イギリス上空で空中査察を実行しました。

 このように相互に査察するのは、信頼醸成措置の一環ですが、ウクライナ問題で対立する中でも、西側とロシアが、相互の空中査察を継続しているのは注目に値するでしょう。先述したアメリカ軍の査察専用機・OC-135B型機は、アメリカによるロシア極東査察の場合、日本の横田基地に立ち寄ったこともあり、日本は、加盟国ではないものの、間接的に協力しているといえるかもしれません。アメリカもロシアも、対立が決定的にならないよう、20年以上続く条約に基づく空中査察を継続している。いわば、のぞき合うのは、この条約に加盟している34カ国の常識となっているのでしょう。のぞかれるのは嫌だから、のぞくな、というどこかの国とは、だいぶ、根本の考え方が異なっているようです。

(画像は、アメリカ空軍査察専用機「OC-135B オープンスカイ」(アメリカ空軍ウェブサイトより))

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